約40年前は、立木価格(山主が得られる利益)が、丸太価格の5割、製材価格の3割ほどを占めていた。しかし、ここ十数年の間に丸太価格の1~2割、製材価格の4%まで下落した。これが林業を疲弊させている。
数十年かけて育てた樹木の価格が1本数千円にしかならない有様だからである。だが大型パネル式建築で森林直販を実現すれば、山元へ利益還元を進めることができるだろう。木材生産量は落ちても山元の利益を増やせる可能性が出てくる。
ウッドステーションの塩地博文会長は「設計情報を集約して、それを森林資源と紐づければ、資源やマージンの無駄を排して木材の価値を最大化できます。木材のサプライチェーンはまったく新しくなり“森林直販”を実現できます。しかも木材調達は外材より国産材の方が有利になる。住宅建築は設計から建築まで通常2~3カ月かかりますが、外材の場合は供給されるまで半年以上必要でタイムラグが生じる。その点、国産材なら建築に合わせて供給するのが可能になるからです」と指摘する。
山元にも利益配分を適正化
すでに大型パネル工場は全国に11あり、北海道から九州まで網羅している。その担い手は、森林組合や製材所、プレカット工場などだ。
大型パネルのもう一つの特徴は、特許は取らずオープンな工法としている点だ。ハウスメーカーのパネル工法のように自社で囲い込まないので、誰にでも参入できる。
ここで問題となるのは、建築側が木材を従来の価格で買いつけ大型パネル化でコストを削減すれば、利益を増せると考えることだ。しかし、それでは林業の振興にはならない。しかし木材を情報化する工程は、膨大なデータが必要でウッドステーション以外には簡単にできない。だからウッドステーションが大型パネルの手綱を握り、利益配分の適正化を図ることができるのだ。
日本では、山元と素材生産(伐採搬出)業、木材市場、製材工場、プレカット工場、そして工務店……と、木材流通の過程が細分化されている。ところが山元は自身の山の木がどこで何に使われているか知らない。工務店も、自分の建てる家の木がどこから届くのか知らない。そして原価もマージンも在庫量も隠しがちだ。それが効率的な木材のサプライチェーンにならない理由だろう。
しかし大工、そして林業界の人手不足というピンチを、大型パネル化によってチャンスに転換できるかもしれない。木材の情報化によって森林から住宅までの流通を一変させて、林業にも建築業にも起死回生をもたらすことに期待する。