パネルと聞けば、ハウスメーカーなどが進めるツーバイフォーやCLT(直交集成板)を思い浮かべるかもしれない。壁で躯体構造を支える工法だ。
基本的に規格化した同一形状の大量生産で、しかも各メーカーが「特別認定」を受けた設計になっている。設計の自由度も低く、間取りや窓・扉の大きさや位置など施主の細かい要望には対応しづらい。
新たな人手不足対策
だが、ここで紹介する「大型パネル」は、従来からの木造軸組工法である。1軒1軒違う家の設計に合わせてつくるオーダーメイドだ。
窓も扉も組み込んだ住宅の壁を大型パネルとする。ただし作業は、建築現場ではなく工場で行う。工場には専用の作業台があり、立て起こし機やクレーンも備える。
おかげで人力の作業は大幅に減って効率よく製造加工できて、建築速度も早くなる。また端材や梱包材などのゴミもそこで処理できる。
こうしてつくった大型パネルを建築現場に運べば、それを金具で固定するだけ。住宅は、内外装を除けば約2日で建つ。登場してまだ数年だが、すでに年間1000棟以上が、この大型パネル式によって建てられている。
この方式の建築は、大工にとって相当な労力の削減となり効率が上がるから、人手不足を補う強力な選択肢になるだろう。出勤先も同じ工場になれば生活にリズムが生まれる。高齢大工も引退を先のばしできるかもしれないし、若手も参入しやすい。
大型パネル化した建築を提唱して進めるのは、2018年に設立されたウッドステーション(千葉市)。この会社が建築するのではなく、建築工程の情報化を担う。設計図から必要な建材を割り出すのだ。そこにはサッシなど木材以外の建具も含まれる。
AIを活用した林業にも寄与する取り組み
ウッドステーションは、今年に入ってAIによる必要な建材とその建築費の概算を行うシステムを開発した。平面図や立面図をPDFにしてAIに送り込むと、数分で概算見積もりを出す。外観だけでなく断熱材やサッシなどの建具、そして内装などの資材も補足できる。
これまで設計者や営業マンが計算していた手間が一気に省かれることになる。しかも精度は、手作業よりむしろ高まったという。
さらに重要なのは、こうした設計情報を林業現場と結びつけることだ。設計段階から必要な木材の寸法を計算し山で造材することを可能とする。
通常、山で生産される丸太は長さ3メートルか4メートルに統一されており、それを製材し建築資材とする過程で大量の端材が出る。加えて見込み生産をするから在庫ロスも出やすい。それらを抑制できるとなれば、森林資源を無駄なく活かせることになる。
しかもAIによって手間が大幅に削減されることで山元から製材、プレカットまでの流通における中間マージンがなくなり、小売価格に近い金額を山元に提示できることになる。言い換えると、山主は高く木材を売れるわけだ。加えてこの取引は予約購入を基本とするので、価格変動も抑えられる。