トランプは、ウクライナの敗北の責任を負いたくないに違いない。1月20日に大統領に就任するまでに、トランプは彼の取引を用意しておきたいに違いない。
不明な要素はプーチンであり彼の条件である。プーチンに近い筋は、相矛盾するシグナルを発している。
彼は現在の前線で敵対行為を凍結する用意があるとするものもあれば、他方、その次には降伏に類似のことを迫るとするものもある。ある筋は、「複雑な問題」が迅速な和平を「非現実的」にすると警告する。
プーチンには彼自身の交渉のやり方がある。ロシアはウクライナのエネルギー・インフラを破壊する作戦を再開している。攻撃は激化すること必至である。
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トランプ政権は「一時的逸脱」ではない
バイデンは、第一期のトランプ政権は米国の歴史の中の「blip」(些細な点)であって転換点ではない、「aberration」(正道を外れた一時的な逸脱)なのだ、と主張して来たが、今回の大統領選挙はバイデンの主張を覆すこととなった。トランプが激戦7州全部を制し一般投票でもハリスを凌駕して、完勝した。二度も勝ったのだから「aberration」ではなく、トランプが体現するのが米国の正体だと言わざるを得まい。
バイデンは、「America is back」と同盟国に告げ、ロシアのウクライナ侵略に対しては、同盟国を糾合してウクライナ支援を主導して来た。トランプはこのウクライナ戦争を24時間以内に終わらせると約束している。どうやって終わらせるのか不明であるが、彼の国際問題への関わり方は二国間ベースの取引に基礎を置く型破りのものになるはずであり、同盟国の意向などお構いなしの一方的なものとなるであろう。
ゼレンスキーと彼の政権が、バイデン政権の支援に苛立ちを強め、ワイルドカードのトランプに賭けてみる気になったとのこの記事の記述には頷けるものがある。バイデンはエスカレーションを怖れるあまり米国製兵器でロシア領内を攻撃することを禁ずる使用制限を解除しようとしなかったが(プーチンの核の恫喝に抑止されていたことになる)、これでは「負けないための戦い」もままならない。