2024年12月5日(木)

Wedge REPORT

2024年11月23日

 「汚染水」喧伝が続き処理水問題が長期・深刻化する中、政府は自ら積極的な情報発信に乗り出し、民間有志は「汚染水」情報への反論を続けた。それらの結果、22年末には民意が放出容認・賛成が多数になった。

 ところが、その後も様々な新聞が「人々の不安」を盾に、海洋放出反対を主張し続けてきた。立憲民主党の一部と共産党・社民党・れいわ新選組の議員らも、これら「汚染水」喧伝に積極的に加担し続けてきた。

 一方で、SNS(X)における100万件以上の投稿を分析した調査からは、彼ら彼女らには強い政治的党派性があり、主要論点が当事者とは乖離していたことが明らかになっている。福島より遥かに大量のトリチウムを放出し続けている中国などの原発は何ら問題視しない傾向もあった。主な反対理由は「当事者のため」などでは全くなかった、政治的・党派的な理由であった可能性が高い

 結局、ALPS処理水放出が開始されても汚染など当然起きなかった。漁業者らが懸念していた風評被害も概ね起こらなかった。しかも、「汚染水」は中国、ロシア、北朝鮮などが仕掛けた偽情報を用いた情報戦であり、人々を煽動し惑わせるプロパガンダであった実態さえ明らかになった。

 つまり、報道と一部政党・政治家らの言動には、少なくとも日本の国益に資する「正しさ」などでは無かった。莫大な時間や社会的リソースを空費させられた処理水問題の代償は消えず、今後も我々一人ひとりの国民に全て降りかかり続ける。(NHK政治マガジン「外交戦と偽情報 処理水めぐる攻防を追う」外務省ホームページ「偽情報の拡散を含む情報操作への対応」朝日新聞GLOBE+「韓国で暗躍する北朝鮮スパイ 押収された指令文「処理水を利用して日米韓を粉砕せよ」」

中国のプロパガンダを助長することにも

 しかも最近の研究では、中国による処理水と汚染水を混同させるプロパガンダは、朝日新聞の報道が引き金になった状況が指摘されている。20年10月8日、朝日新聞が「処理済み汚染水」との造語を用いた報道の12日後、中国人民網はSNS(ツイッター)上で「処理済みの汚染水の海洋放出を決定するとの報道について」と朝日と同じ造語を初めて用いた。この時点まで、中国にはツイッター上で汚染水と処理水の混同や「処理済み汚染水」との造語を用いた発信は見られていなかった。

 翌21年から、中国は「汚染水」プロパガンダを本格化させた。報道が中国によるプロパガンダにも影響を与え、輸入停止措置や日本人学校への投石など不利益の遠因となった可能性すら考えられるのではないか。

 ところが、日本国内で「汚染」喧伝に加担した人々は、何ら社会的責任も問われていない。加害した側のマスメディアも、自分と仲間に不利となるような事実は(処理水の安全性報道がそうであったように)積極的に報じず、社会問題としてのアジェンダセッティングを避けようとする。


新着記事

»もっと見る