さて写真3を見てほしい。左側と右側の違いが分かるだろうか。ほぼ同齢のヒノキ林だが、左は明るく下層植生がある。右は暗く下層植生はない。この違いはどこからくるのであろうか。
正解は、枝打の有無である。左は枝打をしているので、光が林床に届き植生が入ってくる。生物多様性とか環境面からは左がよさそうであるが、造林木の葉の量が枝打によって減っているので、成長量は右がよいだろう。それぞれの森林所有者の考え方次第である。
それにしても枝打は、コスパの悪い作業であるから、環境面の森林の機能向上や害虫防除を目的に行うなら、補助事業の対象としてもよいのではないか。やっと50年生になったばかりの並材を伐採するのに補助金を使うより、枝打を行って生物多様性を高め、害虫を防除して伐期を延長する方が、社会のためであり、品質向上によって森林所有者のため、林業界のため、消費者のためにもなる。
作業適期について
前回「人工林の多様性を左右する除伐・つる切、悩ましいつるの二面性〈材質低下・労働災害と民芸品材料・花や葉の自然美〉」の除伐の節で、その適期について切り株から萌芽・再生しにくい秋から冬とお伝えした。それに対して研究者から、つる切・除伐も生物学的適期は下刈と同じ初夏から夏だとご意見をいただいた。
光合成生産物が根株に移動して再生や萌芽を助長することになっても、造林木に追いつくのには時間がかかるので、夏に除伐して少しでも造林木の成長を促した方が有利という判断だ。それと夏は下刈の全盛期で、除伐まで手が回らない労働力の配分上の都合から、秋から冬が適期となったのだと。
それも一理ある。国有林では梅雨時期の主伐は、丸太に腐朽菌やキクイムシが入りやすいので、この時期の主伐を休止して、作業職員を除伐に回していた。雨の中合羽を着ての作業を嫌がるかと思ったが、達成感があるらしく、「造林作業もやってみれば面白い」と好評だった。このように除伐に関しては、さほど適期にこだわらず労働力が確保できるときにやればよいだろう。自家山林なら土日に自分でボチボチやるのも一興である。