DDTは農作物の害虫防除に広く使用されていたが、分解物(DDE、DDA)が環境中で非常に分解されにくく、また食物連鎖を通じて生物濃縮されることがわかり、現在、日本や先進国では製造・使用されていない。一方、DDTはマラリアを媒介する蚊の駆除には今でも有効だ。現在、マラリアによる死亡者数は年間150万~270万人といわれる。国際保健機構は、2006年9月、マラリア制圧のため屋内に限定したDDTの使用を勧告した。
変わる消費者の「農薬」への受け止め方
「減農薬」「無農薬」と書かれていると安全性が高いと思いがちな消費者もいる。そのような表示があるから、農薬は危険だと思うようになったというアンケート結果もあるくらいで、農薬を避けることで消費者にアピールできると考えている事業者は多いようだ。
食品安全委員会が04年(平成16年)から継続して行ってきた食品安全モニターによるアンケート調査によると、このアンケートの開始当時、農薬に対して「とても不安である」と回答した人は44.7%、「ある程度不安である」は45%であった。このふたつの回答を合わせて不安を感じる人が70~80%存在する傾向は11年(平成23年)までに続いた。
その後はこの二つの回答は合わせて50%前後になり、23年(令和5年)まで40~50%で落ち着いている。このアンケートがすべてではないが、明らかに農薬への不安を抱く人は減っているようにみえる。ただ、消費者インタビューで「農薬を使っていない野菜を選びたい」という声、生産者の「農薬を使わない努力をしている」といった声もあり、今も農薬へのネガティブなイメージは根強い。