2025年3月14日(金)

Wedge REPORT

2025年1月20日

豊田章男トヨタ自動車会長が
5年ぶりに記者会見

 日本から出展した企業は、ソニーやパナソニック、シャープなどの家電メーカーのほか、ホンダやスズキなどの自動車メーカー、それに農業機械のクボタや建設機械のコマツなど、家電製品にとらわれない幅広い顔ぶれとなった。コロナ禍を機に2021年から出展を取りやめているトヨタ自動車も、豊田章男会長が5年ぶりに記者会見し、2020年のCESで発表したスマートシティー構想の「Woven City(ウーブン・シティ)」について「今年秋から入居を開始する」と計画が着実に進んでいることを訴えた。日立製作所もコロナ禍後初めて出展し、同社が開発しているAI技術などを来場者に披露した。

記者会見で「Woven City」の具体策を発表したトヨタ自動車の豊田章男会長(筆者撮影)

 CESで最も注目されるモビリティー分野で今回特に話題を呼んだのはソニーとホンダが合弁で設立したソニー・ホンダモビリティ(SHM)とCESに初出展のスズキだった。SHMは車内エンターテインメントに重点を置いたコンセプトカーとして発表してきた電気自動車(EV)「AFEELA(アフィーラ)」の製品版を大規模なブースで公開し、その直後から米国内向けに先行予約を開始した。価格は8万9900ドル(約1400万円)からとなるが、「物価上昇が激しい米国では決して高い値段ではない」(川西泉SHM社長)とし、納車は2026年半ばを予定している。親会社のホンダも昨年、EVの「Honda 0(ゼロ)」シリーズの発表で話題を呼んだが、今年は新たにSUVタイプも発表した。

ソニー・ホンダモビリティが米国で発売した電気自動車の「AFEELA 1」と川西泉社長(筆者撮影)ホンダが開発した電気自動車の「HONDA 0」シリーズ(筆者撮影)

スズキは日本の「軽自動車」の
コンセプトをアピール

 スズキが初出展ながら話題となったのは「軽自動車」という日本特有のコンセプトとEVや自動運転車の機能をうまく組み合わせたためだ。スズキは豪州のベンチャー企業、Applied Electric Vehicles社と組んで、同社のSUV車「ジムニー」のラダーフレーム(台車)を使った搬送用の電気自動運転車を発表した。台車の上の部分を自由に変えられる仕組みで、工場や農場、採掘場など様々な場面での搬送に使える。スズキは米小型EVベンチャー企業のGlydways社にも出資しており、バス型の4人乗り小型電気自動運転車も発表した。展示ブースには「小・少・軽・短・美」と漢字で書いたロゴと英語の説明を掲げ、スズキが掲げるコンセプトを上手に表現していた。

スズキが発表した電気自動運転車と開発を手伝った豪Applied EV社のルシアーノ・ナカムラ氏(筆者撮影)
米国でブームの軽トラックも展示されていた(スズキの広報資料より抜粋)

 さらに興味深かったのはブース内にスズキの軽トラック「スーパーキャリィ」の中古車が展示されていたことだった。車内には「この車は米国向けに発売されたものではありません」とわざわざ説明が書かれており、軽自動車メーカーとはいえ「なんでこんなガソリン車を最先端技術の見本市に展示しているのか」と思った。よく話を聞くと、実は米国では今、並行輸入で持ち込まれた日本の軽トラがブームを呼んでいるそうだ。というのも米国では製造から25年を経過した車両はクラシックカー扱いとなり、右ハンドル車でも販売が可能で、米国のガソリン高を反映し、農場での作業などに人気を博しているのだという。電気でなくても「エコ」であることをアピールしたユニークな展示だった。


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