2025年3月14日(金)

Wedge REPORT

2025年1月20日

 電気自動運転車には米国の「テスラ」やグーグルの親会社であるアルファベット傘下の「Waymo(ウェイモ)」といった乗用車型の車両とフランスの「NAVYA(ナビヤ)」のようなバス型の車両がある。日本メーカーの自動運転車ではトヨタが2018年に発表したバス型の「e-Pallete」が話題となったが、東京五輪で選手の送迎には使われたものの、まだ商用化には至っていない。スズキは台車タイプの自動搬送車を今年8月から日本と豪州で100台発売し、来年には400台販売する計画だ。これまで日本メーカーは電気自動運転車に二の足を踏んできたが、小型車に強いスズキがこうした形で参入したことにより、自動運転分野における日本企業の存在感が増すことが期待できそうだ。

サムスン電子、LG電子などが
生成AIロボットを発売へ

 もうひとつCESで注目されたAIの分野では、昨年に引き続き韓国のサムスン電子やLG電子、中国のTCL科技集団といったメーカーがテレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品にAIを組み込む動きが目立った。 特に話題を呼んだのは生成AIによる会話や表現機能を搭載した家庭用のコンパニオンロボットだ。サムスンは2020年に初めて公開した球体型家庭用ロボット「Ballie(ボーリー)」を今年上期から発売すると発表した。カメラやスピーカー、プロジェクター機能などを搭載し、壁や床に映像を投射したり、電話をかけたりできる。LGもAIロボットの「Q9」を今年下期から発売すると表明し、TCLも新たに「Ai Me(アイミー)」というAIロボットを発表した。

中国のTCLが開発したAIロボットの「Ai Me(アイミー)」(筆者撮影)

 4つ目の注目技術分野に挙げられたヘルステックでは日本企業の躍進も目立った。キリンホールディングスは減塩が必要な人向けの電子スプーン「エレキソルト スプーン」を出展し、主催者から「CESイノベーションアワード」を受賞した。微弱な電流を流すことで塩味を強く感じられるようにしたスプーンだ。化粧品大手のコーセーは東京エレクトロンデバイスと共同で、人間の顔にプロジェクションマッピングすることで手軽にメイク体験ができるMR(複合現実)技術を出展し、主催者から表彰を受けた。日本からキリンやコーセーといった家電以外の消費財メーカーがCESに出展するのは新しい傾向で、家電製品に代わる日本の技術力を示す重要な場となっている。

日本のイノベーション力は
24位から17位へ浮上

 主催団体のCTAのゲイリー・シャピロCEOはかつて『ニンジャ・イノベーション』という著作を発表したことがある日本びいきの弁護士だが、この10年間ほど韓国や中国に追い上げられる日本企業を心配していた。CTAではそうした各国のイノベーション力を分析・評価し、それを国別にランキング化した「グローバル・イノベーション・スコアカード」という報告書を発表している。

 スイスのビジネススクール、IMDも「世界デジタル競争力ランキング」を発表しているが、CTAはダイバーシティーの推進やベンチャー企業の育成などイノベーションを起こすことにその国がどれだけ注力しているかに着目しているのが特徴だ。前回発表した2023年の報告書では日本は残念ながら24位だったが、今年はなんと17位へ浮上した。こうしたCTAの評価からも日本企業の復権や日本のイノベーション力の向上が読み取れるといえよう。

 ただCESにおける日本企業の存在感はまだまだ十分ではない。アナログの家電全盛時代はソニーやパナソニックなど日本メーカーがその花形だったが、インターネットが登場し、デジタル化が進んだ今は日本が得意としていた音響映像(AV)市場をアップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなどの米国企業や、サムスン、LG、TCL、ハイセンスといった韓国・中国メーカーに主導権をすっかり奪われてしまった。言い換えれば、装置産業型の大企業から、動きの速いベンチャー企業やそうした気概のあるオーナー系企業にCESの主役が移ってしまったといえる。


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