2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年1月28日

化石燃料増産で価格は下がるのか

 選挙期間中から「化石燃料を掘りまくれ」と発言していたトランプだが、増産の対象となるエネルギーは全て「国家エネルギー非常事態宣言」に、具体的に列挙されている。

 石油、石炭、天然ガスの化石燃料に加え、石油製品、ウラニウム、バイオ燃料、地熱、水力、重要鉱物と明記されている。

 再生可能エネルギーの中でも地熱にはシェール掘削技術が利用されるので(トランプ「掘って、掘って、掘りまくれ」は地熱も?シェール革命の技術転用の可能性、日本にも追い風か)、トランプ支持の化石燃料業界のビジネスだ。バイオ燃料が対象になるのはバイオエタノールの原料のトウモロコシ生産者に共和党支持が多いためもあるだろう。

 「価格危機対策を実施」の中では、エネルギー価格の上昇がインフレを引き起こし、生活を圧迫しているとし、化石燃料を増産し価格を引き下げると述べられている。

 米欧日の主要国が進めたロシア産化石燃料の購入量削減の影響により22年から23年にかけ、石油、石炭、天然ガス価格は大きく上昇した(図-1)。米国の消費者物価指数も影響を受け、他の主要国と同様に上昇した(図-2)。

 化石燃料自給国米国は、欧州諸国ほどの化石燃料価格の上昇に見舞われなかったが、それでも物価が大きく上昇した理由の一つはガソリン価格の上昇にある。

共和党支持者のためガソリン価格引き下げ

 「価格危機対策を実施」は、前トランプ政権末期のガソリン価格2.33ドル(1ガロン当たり。1リットル当たり約95円)は、バイデン時代に最高5ドルまで上昇し、今も高止まりしていると述べている(図-3)。米国のガソリン価格は、完全に原油価格に連動しているので、この上昇は原油市場を反映したものだ(【EV嫌いからEV好きに?】トランプの鼻息は荒くも強い市場の力、民主党と共和党のエネルギー政策をどう見るか)。

 車の利用が多い米国では、ガソリン価格が、消費者物価に日本との比較では相対的に大きな影響を与える。ガソリン価格の上昇は、米国民にとっては肌身に感じる物価問題だ。

 日本人の乗用車運転者の平均運転距離数は、年間約4300キロメートル(km)だが、米国人の平均運転距離は年間1万4263マイル(約2万2950km)。日本人の5倍を超える。


新着記事

»もっと見る