2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年1月28日

 禁止の理由は、漁業への影響、電力価格などが挙げられているが、トランプが風力発電設備を毛嫌いしていることもあるだろう。

 トランプは、スコットランドに保有するトランプ・インターナショナル・ゴルフリンクスの近くに建設される洋上風力発電所が景観上許されないとして訴えたことがある。

 選挙期間中の風力発電についての発言は次だ。「もっとも高いエネルギーだ。鳥を殺し、鯨を殺し、環境を壊す。就任1日目に終わらせる」。

EV補助金打ち切りで困るのは誰?

 EVへの補助金打ち切りは、トランプ支持者のイーロン・マスクが経営するテスラに影響を与えそうだが、これは、テスラの競争相手により打撃を与える可能性が高い(【トランプとマスクが自動車市場を破壊する?】メキシコ産への高関税は日本車にも影響必須、補助金廃止でEV販売はどうなるのか)。

 バイデン政権は消費者のEV購入に1台当たり最大7500ドル(約115万円)の税額控除を認め、設備への補助も設けた。自動車メーカーへの補助金は、テスラのライバル企業に配られた。

 バイデン政権は、昨年7月に内燃機関の自動車と関連メーカーに対しEV製造への転換を支援するため、GMへ5億ドル、ステランティスへ6億ドル弱など計17億ドル(約2600億円)を支援した。昨年11月には新興EVメーカーのリビアンに、新工場建設資金として条件付きながら66億ドル(1兆円)の融資を決めた。

 テスラのライバル企業が製造台数を増やしており、米国のEV市場で圧倒的な存在感があったテスラはシェアを落としている。

 22年年初に75%だったテスラのEVシェアは、23年年初約60%、24年年初50%強まで落ち込んでいたが、24年第4四半期には44.4%に下落した。

 24年を通し米国のEVの販売台数は130万台を超え、23年比7.8%台数を伸ばしたが、テスラは販売台数を約3万8000台落としている。EVへの補助金がない方がテスラには有利なのではないか。

 圧倒的にEVの導入が進んでいたカリフォルニア州をはじめEV導入シェアが高い州は、民主党地盤の州ばかりだ。共和党地盤の州にはEV補助金打ち切りの打撃は小さい(表-3)。

太陽光と水素への補助金はどうなる

 バイデン政権が進めた連邦政府所有地での大規模太陽光発電導入(トランプ勝利の要因にバイデン政権の愚策があった!米国で起こる太陽光発電反対の動き…トランプは地盤をとるか、中国企業を税金で助けるか?)については、60日間原則許可が凍結される。トランプ政権が凍結後連邦政府所有地での太陽光発電をどう扱うか注目だ。

 太陽光、風力発電、クリーン水素製造は、バイデン前政権で設立したインフレ抑制法とインフラ投資・雇用法に基づく投資税額控除などの補助金を受けている。これはどうなるのだろうか。

 両法に基づく支出については、90日間の凍結期間が設けられ支出が再検討される。大統領令「米国のエネルギーを解き放つ」の翌日にホワイトハウスから出された補助金に関するガイダンスを解釈したロイター電は、例えば橋などのインフラへの支出は凍結に含まれないとしているが、多くの関係者は水素、太陽光への補助金については90日間の凍結対象と理解している。

 共和党が地盤とする州に多い風力、太陽光発電設備と水素製造拠点への補助金が、凍結期間後どうなるのかは不透明だが、太陽光、水素事業関係者の間では、共和党支持の州には影響を与えない形になるのではとの楽観論も強い。

 支持者の多い州に配慮されるのであれば、結局共和党支持者第一のエネルギー政策ということになるが、必要な法制度改正と検討期間を経て数カ月後にはその姿はより明確になるだろう。

間違いだらけの電力問題
山本隆三 (著) ¥1,650 税込
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