2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年1月28日

 むろん住んでいる場所により、年間の走行距離は大きく異なる。米国でもっとも走行距離が多い州は人口がもっとも少ないワイオミング州で、1年間に3万8500km、日本人の9年間分だ。上位10州をみると共和党地盤の州ばかりだ。

 一方、走行距離が少ない州は民主党地盤の州が多い。民主党支持者が都市部に多く、通勤距離が短い、あるいは公共交通機関を利用していることがあるだろう(表-1)。

 共和党支持者はガソリン価格上昇の影響をより大きく受けるので、トランプはガソリン、原油価格を下げたい。しかし、「掘りまくれ」とは言ったものの、米国が大量生産したから原油価格が下がるわけではないし、政策により生産量が増えるものでもない。市場が生産量を決める。

 トランプは、1月23日の世界経済フォーラムの年次総会、ダボス会議にオンラインで参加し、石油輸出国機構(OPEC)に原油価格の引き下げを要請した。

 原油価格が下がれば共和党支持者も一息つける。トランプも、米国内の生産量を増やしても価格が下がるものでもないし、生産量が政策で動かないと実は分かっているのだろう。

嫌われた洋上風力発電設備

 陸上風力発電設備は、風況に恵まれた共和党地盤の中西部から南部の州に多く設置されている。トランプは風力設備への支援を維持するとの予想が多かったが、洋上風力には厳しく出た。

 就任初日の大統領令で、連邦政府が管轄する領海外大陸棚に建設される洋上風力設備へのリース設定を禁止した。既に設定されたリースには影響はないとしながら、見直しするとしている。

 米国北東部の州沖では洋上風力設備の建設が進んでいる。インフレにより風力発電設備の価格が大きく上昇し、撤退した企業もあるが、残った企業は事業を継続している(そして誰もいなくなる 死屍累々の欧米の洋上風力事業者)。

 既に環境評価が終わり、建設許可を得ている10プロジェクトは全て民主党が地盤の州沖に建設される(表-2)。

 これから予定される事業の建設地もやはり民主党地盤の州の大陸棚だろう。洋上風力の建設ができなくなると、影響を受けるのは民主党地盤の州だ。

 なんのことはない。既存の風力発電設備が多く立つ共和党地盤の州には大きな影響はない。連邦政府所有地も民主党地盤の州も多い西部の州に広がっている。


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