2025年2月11日(火)

World Energy Watch

2025年1月28日

 トランプ新大統領は、就任初日に多くの大統領令に署名した。以前からの主張通り、「中国を助け米国の競争力を阻害する温暖化対策」「グリーン詐欺のグリーンニューディール」を中止する大統領令も出された。エネルギー関連の大統領令に一貫しているのは、民主党支持の州の冷遇と共和党支持者への配慮のように見える。

ダボス会議でも、OPECへの原油価格引き下げを求めたトランプ大統領。その狙いは(Anadolu / gettyimages)

 「国家エネルギー非常事態宣言」では、現在のエネルギー生産、インフラは需要を支えるには不十分であり高価格をもたらしたとし、さらに、エネルギー安全保障は国際競争力にとり重要になっていると述べ、エネルギーと重要鉱物の不十分な生産が危機を引き起こしたとしている。

 「米国のエネルギーを解き放つ」中では、化石燃料などを生産するための規制、手続きの見直しに加え、消費者の選択を増やすため電気自動車(EV)への補助廃止、さらにグリーンニューディールに関する支出を凍結し、90日間の再検討期間が設けられた。

 エネルギー増産の背景には「ファクトシート:生活危機に打ち勝つ米国家庭のため、トランプ大統領は価格危機対策を実施」で触れられているガソリン価格の高止まりがある。

 平均すると日本人の5倍以上の距離も乗用車を走らせる米国人にとっては、ガソリン価格の高止まりは大きな関心事だ。

 大統領令の中では増産対象として具体的なエネルギーが列挙されているが、触れられていないエネルギーは、風力、太陽光、水素だ。風力については、「領海外大陸棚における洋上風力発電への全ての区域貸し出し(リース)からの一時的な撤退と、風力発電事業に対する連邦政府のリースと許可の見直し」により連邦政府が管理する大陸棚での洋上風力の新設は当面不可能になった。

 バイデン政権は、クリーンエネルギーとしてEV、風力だけでなく、太陽光、二酸化炭素の排出量が少ないクリーン水素も補助金により推進していた。これについては、グリーンニューディールの支出に含まれ、90日間の凍結後再検討されると理解される。

 米国では西部を中心に連邦政府が全国土の3割近くを保有しているが、連邦政府所有地における太陽光、風力発電設備については、内務省からの通達により、長官以下数名の幹部以外の許可の発行が60日間停止される。

 一見すると、全ての州が影響を受けるように見えるが、大統領令はグリーンニューディールに熱心な民主党支持の州に厳しく、共和党支持の州にはやさしくなっている。

 洋上風力もEVも導入が進んでいるのは民主党の地盤の州だ。ガソリン価格引き下げが実現すれば、恩恵は共和党地盤の州が多く受ける。


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