食文化を重視した輸出とプロモーション
円安によるインバウンドや、リピート観光客の増加、日本の食の国際化(アウトバウンドへ)ということで、地方公共団体等によるプロモーションが盛んである。それは、都道府県知事や市町村長によるトップダウン型の海外展示即売イベントなどが多いが、実情はプロモーターに乗せられた定型的、定番の催しなど、いわば役所型の売り込みである。事前の調査などが不明確なために売り込み先の重複や後手を引いた場合の安売りなど効果が疑わしいケースも少なくない。要するに、個別バラバラの売り込みなのである。
その点からすると、JA京都の例は特筆に値する。「京野菜」や京都の農畜産物を売り込もうと、2013年にフランス・パリのベルサイユ宮殿を借り切って晩餐会を開いた。
その後、19年までスペインやイタリア、英国と場所を変えて毎年、晩餐会を開催。コロナ禍があけた昨年12月には、東京・迎賓館赤坂離宮を舞台に、28カ国の大使夫妻や政府関係者、公邸料理人など約90人を招待しての和食晩餐会を開いた。和食文化と現地の食文化をコラボさせた「京野菜」をプロモーションし、世界の耳目を集めた。
生産者をはじめとする関係団体・企業が一丸となり、国の支援も活用しながら総力を挙げてのプロモーションが重要である。これは、海外ではよく知られた手法なのだが、需要開発と効果的マーケテイング、品質の確保、国の支援の下で行う資金融通などの「チェックオフ制度」をもっと活用、前進させることである。
目指す目標としては、食べ応えのあるアメリカの「アメリカンビーフ」、脂身の少なく高たんぱくなオーストラリアの「オージービーフ」、健康的で環境にやさしいニュージーランドの赤身ビーフといった統一的なブランドイメージだ。官民一丸となって進める必要がある。
そして、食料品等の輸出に際して最も重要なことは、相手国の食生活を重視することである。キーワードを列挙すれば、その国の他の食品・食事とのコラボ(例えば食と酒とのペアリング)、家庭食と外食・中食の取り方の違い、穀物は粉食か粒食か、その国の人たちが注目する持ち味となる表示、テロワール(土地や土壌)、などだろう。
ちなみに、海外では、穀物は基本的に粉食で、小麦の貿易量1億2000万トンの1割(1200万トン)が「小麦粉」である。コメの貿易量は5000万トンだから、粉食文化の状況から見て、1割に当たる500万トンの市場可能性がある。
穀物の世界での主流は「粉食」であり、その特徴は、輸送・携帯に便利、火の通りがよく、調理時間も短い。そして、加工しやすいところにある。さらに、米粉に関しては、「グルテンフリー」として世界的な商品となり得る。
