2025年12月5日(金)

革新するASEAN

2025年4月4日

専門家の9割が評価できない経済政策

 こうした中、今年1〜2月の財政収支が前年同期の26.0兆ルピアの黒字から、31.2兆ルピアの赤字に転落した。歳入が前年同期比20.8%減、うち税収が同30.2%減だったことが響いた。スリ財務大臣は、財政赤字を通年でGDP比3%以下に抑える法律に則して、目標の同2.53%を維持することを強調し不安の払拭に努めたが、市場の信認が厚い同財務大臣が財政赤字の責任を取って辞任するのではとの憶測が浮上し、株価の下落を招いた。

 プラボウォ政権の政策には経済専門家も厳しい目を向ける。インドネシア大学経済社会研究所が国内外の専門家42人を対象に2月中旬に実施したアンケート調査によると、「政権発足100日の経済政策の方向性」に関して、全体の約9割が効果的でないと評価した(図表3)。

 また、「3カ月前と比較した経済状況」に関しては約7割が悪化したと回答、「今後の経済成長見通し」は半数以上が悪化するとの見通しで、財政・金融政策、労働政策、組織機構改革などに関しても、総じて否定的な評価が下されている。

 ジョコ前政権の10年間、物価の低位安定と財政規律の維持による安定的なマクロ経済運営に海外投資家は信頼を寄せ、インドネシアを投資先として有望視してきた。しかし、プラボウォ政権ではその信頼が揺らいでいる。近隣のタイではペートンタン政権もデジタル通貨支給を開始し、2025年度予算では財政赤字がGDP比4.5%に拡大する見通しだ。トランプ2.0により経済の不確実性が増す中、安定成長を遂げてきたASEAN諸国も、ポピュリスト的な政策をとる国々の状況を注視する必要がある。

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