2024年4月18日(木)

Wedge2023年10月号特集(ASEAN NOW)

2023年10月8日

今年は、日本ASEAN友好協力50周年の節目の年です。日・ASEAN関係は今、リージョナルパートナーからグローバルパートナーへと変貌しつつあります。「Wedge」2023年10月号に掲載されている「日本人なら知っておきたい ASEAN NOW」記事の内容を一部、限定公開いたします。

 8月22日は、東南アジアで民主化が揺らいでいることを印象付ける日になった。

 この日タイでは、5月の総選挙で第一党に躍り出た前進党を排除して、長年対立してきたタクシン派と国軍系政党が大連立を組んで新首相を決めた。カンボジアでは、有力野党の参加を認めない総選挙での勝利を盾に、40年近く首相を務めてきたフン・セン氏の長男が新首相に就任した。ともに「民意を無視した政権」と批判される。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は経済成長センターとして外国投資をひきつけてきたが、ミャンマーで2021年にクーデターが起きると外資の引き揚げが相次いだ。民主化に逆行すれば「安心して投資できる一つの地域」とのイメージが崩れ、経済発展に打撃を与えかねない。

「国家と国民の利益のために務めていく。任期の4年間を変革の4年間にする」。タイ貢献党のセター・タウィーシン氏は8月23日、党本部を訪れたワチラロンコン国王の使者から首相就任の宣言を受けて、決意を語った。国王の肖像画の前にひざまずき、頭を上に向けて合わせた両手を額の上まで高く上げ国王への敬意を示した。

国王の肖像画の前にひざまずくタイのセター・タウィーシン新首相。民意はどこへ?(GOVERNMENT SPOKESMAN OFFICE/AFLO)

 5月の総選挙で予想を翻して第一党に立ったのは、タブーとされてきた王室改革を掲げる野党の前進党だった。01年にタクシン・チナワット氏が首相に就任して以来、国軍など王室に近い保守派とタクシン派との対立が軸だったタイ政治の構図が塗り替わり、前進党は若者を中心に国の制度を変えたいという有権者の心をつかんだ。前進党を中心にした野党8党は下院の過半数を押さえて、同党の党首を首相に据える政権の樹立を目指した。ところが、首相選任の投票では14年にクーデターを実行した国軍が選んだ上院議員たちが阻んでしまった。第二党のタクシン派政党、貢献党は前進党を見限って、連立相手を宿敵の国軍系政党に鞍替えしてセター政権を成立させた。

 裏で動いたのは、貢献党の実質的なオーナーであるタクシン元首相だ。タクシン氏は06年の国軍によるクーデターで失脚して海外に逃げていた。新首相が決まった同じ日に帰国して拘束されたが、国王による恩赦で刑期が1年に短縮された。セター政権成立の背景には、前進党による王室改革を防ぎたい保守派と国王によるタクシン氏の恩赦をめざす貢献党の思惑が一致したことがあるとされる。

 カンボジアの首相交代劇はより強引だ。7月の総選挙では18年に続いて有力な野党を排除してフン・セン首相の与党カンボジア人民党の圧勝を演出した上で、初当選した長男、フン・マネット氏への親子承継を実現させた。ポルポト政権の大虐殺とその後の内戦から抜け出し、1993年に国連監視下での選挙を経て、新生カンボジアは船出した。平和で民主的な国ができると期待されたものの、フン・セン氏は強権的な姿勢を強めてきた。

 ミャンマーの場合はさらにひどい。軍事政権下で抵抗運動を続けたアウンサンスーチー氏は事実上の政権トップを務めていたが、2021年の軍事クーデターで再び囚われの身となり、国軍支配が復活した。11年の民政移管からおよそ10年間にわたり自由の風を味わった民主派はクーデターに反発し、少数民族とも連携して武装抵抗を続けている。


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