急性中耳炎の症状
急性中耳炎は、プライマリ・ケアの現場でよく遭遇する疾患である。通常、ウイルスによる急性上気道炎に合併して起こる耳管の機能不全に伴って起こる、ウイルスまたは細菌による感染症である。
大人も罹患するが、子供で多く認められる。年齢的には、生後6カ月から15カ月が発症のピークで、男の子に多い。3歳までに50〜85%の子供が少なくとも1回の急性中耳炎に罹患し、生後24カ月をすぎると発症リスクは減少する。
通常、急性中耳炎で認められる症状には発熱、耳痛(耳の奥に感じる痛み)、耳漏(耳の穴から出てくる分泌物)がある。耳の聴こえが悪くなったり、耳の中に圧迫感や充満感があったり、耳の中や周囲にかゆみや刺激を感じたりすることもある。
ただ、小さい子供の場合には、C.B.ちゃんのように自分の身体に起こった症状をうまく言葉で表現できないことが多い。音への反応が悪くなった、耳をこすったり引っ張ったりする、いつもより機嫌が悪くなった、イライラして落ち着きがない、ちょっとしたことで過敏に反応する、などという変化に両親など普段からその子の様子をよく知っている人が気づくことがある。食欲がない、元気がない、という一般的な不調もあるし、嘔吐を伴うこともある。
このようにあまり特異的でない漠とした症状であるため、家庭医が幼小児の急性中耳炎を診断する時は、ちょっといつもとは異なるアプローチをとる。
まず子供の全身状態を診て、その他の重篤な疾患の可能性が低いことを確認した上で、その子の様子を知りうる人(たいていはその子を連れて来院した親)から、上記のような「いつもと違う」様子に気づいていないかを聴き出す。もしそれがあれば、その次に「では、急性中耳炎である可能性はないか」と疑って、その可能性を除外(否定)するための診察に進む。
これは「除外診断」と呼ばれる診断アプローチだ。以前にお話しした帯状疱疹の診断のように、典型的な症状の経過と皮膚所見からその他の可能性をほとんど考える必要がなく診断できる場合とは対照的である。
耳の構造
簡単に耳の構造を説明しておく。耳は外耳、中耳、内耳に分けられる。外耳は、外から見える一般に「耳」と呼べばこれをさす顔の両側に付いている「耳介」と、一般には「耳の穴」と言われるが実際にはトンネル状になっている「外耳道」からなる。
外耳道の突き当たりには音の振動を受ける「鼓膜」があり、そこから内部が「中耳」で、鼓膜から音の振動を伝える「耳小骨」とそれが存在するスペースである「鼓室」、耳と鼻をつないで中耳内部の圧力を調節するチューブである「耳管」、そしてそれら全体を取り巻く骨の空間で、中耳の換気を助ける「乳突洞」と「乳突蜂巣」が含まれる。
「内耳」は中耳のさらに奥にあり、平衡感覚(3Dの回転加速度)を司る「三半規管」と聴覚に関係する巻貝状の「蝸牛」からなる。
