2025年6月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月18日

ガザ住民の心情

 ガザで反ハマスの抗議デモが起こることはここ数年で初めての出来事と思われる。一旦、数週間の休戦で安堵した後に戦闘の再開でガザの住民も精神的に参ってしまい、これ以上戦闘に巻き込まれることは耐えられないという気持ちが高まって今回の抗議デモに繋がったのであろう。

 しかし、仮にガザの住民がハマスに対して立ち上がってハマスをガザから追放したら、現状で一番起こり得るのはイスラエルの再占領であり、その後、トランプ構想が強引に進められてガザからパレスチナ人が追放されてしまう未来も全くあり得ないとは断言出来ず、いずれにせよ決してガザの住民にとり望ましい顛末とはならないであろう。

 「07年にハマスがガザを完全に支配して以来、ハマスは批判者を拘束し、ハマスの政策に反対する抗議デモを蹴散らすことで反対を容赦無く弾圧してきた」というのは概ね間違いは無いだろう。ハマスは対イスラエル武力闘争を通じてイスラム原理主義に基づくパレスチナ国家樹立を目指しているが、ガザは元々アラブ世界でもリベラルな地域だった。

 当然、イスラム原理主義者ではない多くのガザの住民が内心ハマスを快く思っていなかったとしても驚くには当たらない。しかし、ガザの住民にとり、そもそも多くの住民はイスラエルの建国により故郷を追われ難民化し、さらに今もイスラエルの迫害が続いていることから、イスラエルに対する憎悪がより強く、ハマスに対する反発は顕在化していなかったと考えられる。

 1年以上続くハマスとイスラエルの衝突の結果、ハマスが弱体化する中でイスラエルの攻撃が再開され、やり場の無い苦境の中、一部のガザの住民はハマスを批判する抗議デモに至ったのであろう。

 約2カ月の停戦期間中にハマスは兵力の再建を図った模様だが、これまで外からハマスを支援してきた勢力の内、イランとその代理勢力はイスラエルの攻撃で弱体化しているので有効な支援はできず、カタールも現在の状況下では派手な動きはできず、十分な兵力の再編はできなかったものと思われる。

 記事によれば、ハマスはいまだ数千人の兵力を有している由だが、恐らく武器弾薬の不足、休戦により戦闘員の抗戦意欲が削がれたこと等からイスラエルに対してハマスが組織的な戦闘を行い続けるのは困難な状況になりつつあると思われる。


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