2025年5月13日(火)

食の「危険」情報の真実

2025年4月24日

 カドミウム低減対策は、コメの栽培時に長期間水田に水を張り続ける湛水管理で、生産者には手間のかかる作業だ。水を張る期間が長いと、今度はカドミウムと同様に有害な無機ヒ素の濃度が上がってしまう。また近年、温暖化対策として水田から出るメタンガス削減のため、水田に水を張らない中干し期間の延長が推奨されているが、中干し期間が長いとカドミウムが吸収されるので、汚染地域ではこれができない。

新品種「あきたこまちR」への〝期待〟

 あちらを立てればこちらが立たずと悩ましい状況の中、汚染地域でのコメ栽培の救世主と期待されているのが、従来品種に比べカドミウムの吸収性が低い新品種「あきたこまちR」だ。もちもちとした食感や冷めてもおいしいあきたこまちの特長はそのままに、生産者の手間が減ってカドミウム対策になる新品種はいいことずくめといえ、秋田県は今年から新品種に全面的に切り替える方針だ。

「あきたこまちR」説明資料の一部(秋田県HPより)

 実は新品種は「放射線育種」という手法を用いていることで、切り替えに一部の生協や市民団体が反対運動を展開している。放射線育種は70年前に実用化された技術で、葉や果実などに黒い斑点が生じる黒斑病に強くなるよう改良されたナシ「ゴールド21世紀」などでも使われている。今回、基準値超のコメが流通したのは問題だが、コメのカドミウム対策の必要性が改めて認識されたことで、新品種への理解が進むきっかけになれば何よりだ。

乳児用せんべい、日本でOKも台湾でNG

 カドミウムの基準値違反では1月、亀田製菓が台湾に輸出しようとした乳児用向けせんべいが、基準値を超えたとして台湾の検査機関から日本国内に送り返すか破棄するよう指示された。台湾の乳児用食品の基準値が0.04ppmのところ、せんべいから0.044~0.046ppmのカドミウムが検出されたという。日本の乳児用食品の基準値は0.1ppmなので、この乳児用せんべいは日本国内なら問題なく販売できる。

 日本の基準値が台湾より緩いことで、日本の食品の安全性に疑問を持つ人がいるかもしれないが、基準値は厳しければ厳しいほどいいわけではない。カドミウムのように天然に存在する有害物質の基準値を必要以上に厳しくすると、今度は食べられる物がなくなってしまう。日本の基準値は日本のコメを毎日食べ続けても健康に悪影響を与えない量を推定して決めたもので、食べる物がなくて餓死するリスクに比べれば、リスクは小さい。

 国によって食文化は違うので、基準値はその国の事情を考慮して設定されている。日本人が食品から摂取するカドミウムの量は、基準値の変更と関係なく昔より減っている。

 摂取量の減少は、日本人がコメをあまり食べなくなったから。逆にいえば、ご飯が大好きで1日3食山盛りのご飯を食べている人はカドミウム摂取が他の人より多い可能性がある。有害物質によるリスクを減らすために、同じものをたくさん食べるのでなく、いろいろなものを満遍なく食べることが勧められる。


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