3年連続のマイナス成長?
実際ドイツの経済研究所は次々に警戒信号を発している。4月3日、ケルンのドイツ経済研究所(IW)は、「トランプ関税により、25年~29年にEUに生じる経済損害は7500億ユーロ(120兆円・1ユーロ=160円換算)にのぼる」という悲観的な予測を発表した。
ドイツへ生じる経済損害は25年~29年に2000億ユーロ(32兆円)と推定している。28年のドイツの実質GDPは、トランプ関税がない場合に比べて1.5%少なくなる。
またミュンヘンのifo経済研究所は、4月3日、「トランプ関税により、25年のドイツの実質GDPは0.3%減り、成長率が再びゼロを割る可能性がある」という予測を発表した。ドイツ経済は22年のロシアのウクライナ侵攻が引き起こしたインフレがきっかけとなり、深刻な不況の中にある。実質GDP成長率は23年・24年と2年連続でマイナスを記録した。これは主要7カ国(G7)で最低の数字だ。
25年には0.3%とプラスに転じると予想されていたが、ifo経済研究所はトランプ関税の影響で今年もマイナス成長になることを懸念している。「トランプ関税は、自由貿易に対する、第二次世界大戦後最悪の攻撃だ」と指摘した。
さらに欧州中央銀行(ECB)は4月17日、政策金利を2.5%から2.25%に引き下げた。ECBは過去1年間に連続7回利下げしたことになる。
金融緩和の理由として、「ユーロ圏では先行きの不透明感が極端に高まり、デフレ傾向が強まっている」と説明した。この利下げは、ECBがユーロ圏の景気減速を懸念していることの表われだ。実際ECBは3月12日、25年と26年のEUのユーロ圏の実質GDP成長率に関する予測を、0.2ポイントずつ下方修正した。
国際通貨基金(IMF)が今年1月に発表した世界経済見通し(WEO)のアップデート版では、ドイツの25年のGDP成長率を0.3%と予想していた。しかし、4月14日に発表したWEOの中で、ドイツの今年の成長率を0%に引き下げた。
筆者はドイツ企業経営者の間で将来への不安や不透明感が非常に強まっていることから、米欧間の交渉が決裂し対EU相互関税が長期化した場合、ドイツが今年もマイナス成長に陥ることは避けられないと予想している。3年連続でマイナス成長となった場合、ドイツは「欧州の病人」という汚名を当分の間払拭できない。


