2025年12月5日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2025年5月8日

 偽基地局による犯罪組織等の監視は、日本でも2010年代から行われているといわれている。通話内容の傍受には裁判所の令状が必要と通信傍受法(盗聴法)で規定されているのだが、「位置情報」や「識別情報」の取得は明確には定義されていないため、裁判所の令状なしで使われている可能性があるとされている。

 警視庁が使用しているとされる偽基地局は「スティングレイ(StingRay)」と呼ばれる米国L3ハリステクノロジーズ(旧Harris Corporation)のものだ。ハリステクノロジーズは、米国政府向けに携帯電話監視装置を製造している会社だ。

【出典】L3ハリステクノロジーズ(旧Harris Corporation)

 15年に週間文春が「警視庁がスティングレイを使っている」と報道したことから、国会でも度々問題にされている。15年には参議院法務委員会で、山本太郎議員(当時生活の党と山本太郎となかまたち)がIMSIキャチャーを使用しているのかという質問に法務省は、「個別具体的な捜査手法については答えを差し控える」と回答。17年には、参議院内閣委員会で当時民進党の有田芳生議員が「警察はIMSIキャチャーを保有し、運用しているか」との問いに、警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課長が「個別具体的な捜査手法については、答弁を差し控える」と回答。21年には衆議院予算委員会で奥野総一郎議員(立憲民主党)が「スティングレイ型の装置は携帯電話利用者全員のIMSIを取得するリスクがある。令状なし取得は違憲ではないか」との質問に当時法務大臣だった上川陽子議員が「捜査は適性に行われている。法令に基づく適法捜査である」と回答している。

 政府側の答弁を見る限り使用しているのは明らかなような気がするが、偽基地局は容疑者などの特定の個人だけでなく、複数のスマホの利用者のIMSI情報を取得するため、問題視されるのは致し方ない。

偽基地局の被害に遭わない方法

 偽基地局の被害に遭わない最も確実な対策は、2G/3G専用のスマホは使わないことだ。今起こっている偽基地局の問題は、「相互認証機能」があれば防ぐことができるので、3Gへのダウングレードが行えない4G/5G専用のスマホに買い換えることだ。

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