トランプ政権の海軍長官が造船協議で訪韓
ヘッドラインではないが、8日紙面に「フェラン海軍長官が訪韓 米韓造船業の協力を議論」という記事が掲載された。4月30日、ジョン・フェラン米海軍長官が訪韓し、HD現代重工業と造船大手のハンファオーシャンを訪れた。HD現代重工業は世界最大の造船企業で、ハンファオーシャンは韓国造船ビッグ3の一社だ。
フェラン長官訪韓の背景には、米国造船業の衰退と対中国戦略の見直しがある。レーガン政権が1981年に造船業への補助金を打ち切った以降、オフショアリング(国外移転)が進み衰退した。現在の国別造船シェア(2024年国土交通省)は中国54%、韓国28%、日本13%に比して、米国0.1%でしかなく、中国との差は500倍以上となっている。
これに業を煮やしたトランプ大統領は3月の施政方針演説で、ホワイトハウス内に造船局を新設すると表明した。トランプ政権の戦略は、日韓と一体となって米国造船の再生を目指し、中国に対抗するというもの。具体的には商業船舶を軍事転用可能な仕様で建造したり、日本の民間造船所で試験的に実施している米海軍艦艇の整備・修理・オーバーホール(MRO)を拡大したりすることを指す。
俗な言い方だが、トランプ氏が日韓に助けを求めてきたというわけだ。4月28日に訪日して中谷元防衛相と会談したフェラン長官は率直に悩みと相談を打ち明けたようだが、日本は対米関税交渉で「造船カード」を準備しているという。
他方の韓国は、ハンファオーシャンが24年に米国屈指のフィリー造船所を買収して、米海軍艦艇の整備の準備を進めているほか、HD現代重工業が国最大の海軍向け造船会社「ハンティントン・インガルス・インダストリー」と技術提携を発表(5月8日)した。
フェラン長官は訪れた韓国の造船所で、作戦成功を意味する通信コード「Bravo Zulu」を芳名録に書き込み満足感をあらわにしたというが、訪日での逸話は伝わらない。その背景には、日韓政府と業界の反応の違いがあるのかもしれない。