世界は徐々にトランプへの警戒と抵抗を強めているようにも見える。「今や米国は『信頼できない同盟国』になったと批判したカナダのカーニーは、国内の反トランプ感情に乗って、4月28日の総選挙に勝利した。
5月3日の豪州総選挙では、トランプ的傾向を見せていたダットン率いる野党自由党が惨敗(しかもダットンは落選)、予想に反してアルバニージーの与党中道左派労働党が地滑り的大勝を果たした。関税政策等トランプ政権の動向が反面教師として大きく影響したと分析されている。
日本は安全保障への強化も必要
欧州の危機感は、日本にとっても他人事ではない。トランプの問題は、欧州、太平洋を問わず、米国の同盟国共通の問題である。
アジアにはNATOのような同盟組織はなく、日米を含む二国間取決めを通じた米国を中心とするハブ・アンド・スポークのネットワークで成り立っている。それは、欧州と相違して、トランプの圧力には一層脆弱である。
さらにアジアには中国など敏感な問題が多い。関税の後、トランプがいずれ安保に向かう可能性は否定できない。アジアでの安全保障への影響とその対処につき、良く考えておかねばならない。
重層的な協力システムの一層の強化が必要となる。その場合、①欧州との連携を強め(欧州連合〈EU〉と環太平洋連携協定〈TPP〉の連携を含め)、②域内ではたとえ米国抜きでも日豪印でQUAD(クアッド)を維持するとともに、③域内関係国との連携体制を築くことが重要だろう。特に重要な国は、韓国、フィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシア、パプアニューギニア、豪州、ニュージーランド、カナダ等だろう(タイやマレーシア、台湾との関与も検討を要する)。そして、④日中関係をコントロールし、安定的に保っておくことが重要である。
トランプ第二期政権は始まったばかりだが、当面向こう2年、そして4年を何とかやり過ごして、トランプ政権と関与、国民の経済、雇用を守っていく他ない。時間を稼ぎながら、今の秩序の基本に致命的損害が及ばないように努めていくことが重要だ。

