こうした不確実性が続く限り、関税の脅威で外国企業を米国への投資に駆り立てようというトランプの野望は、完全には実現しない。この不安定さは、米企業自身の成長も妨げる。
国内サプライチェーンを持つ製造業者は、安価な輸入品の競争を抑えるため、トランプの関税を歓迎する傾向がある。しかし、そうした企業ですら、貿易政策や競合他社の立ち位置が分からなければ、事業拡大の判断を下すことはできない。
こうした中で、最も合理的な企業の対応は「様子見」になる。大多数の企業にとって、SNS の投稿や貿易政策の一寸とした変化に合わせて意思決定やリスク調整を行うのは、愚かな試みにすぎない。政策の安定が戻った時に初めて、米国経済は本来のダイナミズムを取り戻すことができる。
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ベッセント財務長官が見せた〝意外性〟
この社説ほど、直截で明解な主張はない。非常に説得力のある、絞り出すようなトランプ政策批判である。
社説は、①トランプの世界は不確実な世界であり企業は長期的計画を立てられない、②しかも「トランプは予測不能さを武器にしている」、③「関税交渉に対するトランプのアプローチは、米国企業の活力を削いでいる」「関税は利益率の計算に欠かせない要素であり、国際企業にとり最も複雑な法令遵守の一部でもある」、④「『相互』関税に関する合意をしても、その関税率が維持されるという信頼は低い」、⑤「こうした中で、最も合理的な企業の対応は『様子見』になる」「政策の安定が戻った時に初めて、米国経済は本来のダイナミズムを取り戻すことができる」と主張する。
トランプが予測不可能性を武器にしている点につき、社説は、「不動産開発業者からメディアのスターへと転身した彼にとって、こうした手法は取引を押し切る際や視聴率を稼ぐ上で効果的だったかもしれない。しかし、世界最大の経済を運営するとなると、これは非常に有害だ」と一刀両断するが、それは正しい。
