トランプの予測不能さについて、社説は、先月ベッセントがトランプは「戦略的な不確実性」を利用して貿易交渉で優位に立とうとしていると述べたことを紹介する。ベッセントの発言は正直だ。しかし、やや評論家風に過ぎると心配になった。
他方、カナダのバンフで 5月20~22日に開催された主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議の共同声明は、基本的にまともな声明となり、米国はこんなに協力的だったのかと驚いた。財務大臣の間には、財務仲間として良い雰囲気があるのかもしれない。
5月23日付のブルームバーグは、「ベッセント米財務長官に称賛の声-カナダG7 会議で各国は好印象抱く」と題する記事を配信し、「ベッセント米財務長官は、公の場で目立った言動を控えていた。だが長官は舞台裏で顕著なインパクトをもたらした」と書いている。
トランプの2つの根本的問題
トランプの根本的問題については、予測不能さに二つを追加したい。一つは、全体を見ていないことだ。マクロの経済や国の全体を見ていない。見ているのは、自分の直近のこと、経済的利益だけだ。
最近中東を訪問したが、第一期政権以来、トランプ一族の中東でのビジネス権益は同政権前に比べて3倍になっているという。これではゆくゆく支持層は離れて行くのではないだろうか。
二つ目は、市場を侮っていることだ。市場に代わって自らが決定できると考えているようだ。不動産ビジネスにいるか、社会主義国の指導者であればそれでよいかもしれないが、世界最大の自由主義国家の指導者としては不遜だ。市場は益々逆襲するだろう。
日本製鉄のUSスチール買収計画につき、5月23 日、トランプはこれを承認したと伝えられた。出資比率等重要な要素がなお不明だが、本件が両企業と両国経済関係にとり有益な形で実現するよう期待したい。
