2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年6月13日

林道≒山岳道路の潜在的危険性

 森林土木は基盤となる林地の保全を揺るがす原因ともなることが最大の問題である。

 例えば林道、これは林道以外の山岳地帯を走る一般道路でも同じことなのだが、山地に降った雨水を集めてしまう機能があるのだ。ある意味ダムと同じで、湛水こそしないが堰(せき)のようなもので、林道より上の斜面から流れ落ちてきた水を路面で受け止めてしまう。そのまま路面を横断して下の斜面に流れ落ちてしまえば問題ないが、林道が坂になっていれば水は坂の下方に流れ、どんどん増量して川のようになる。

 そこで林道にはふつう山側の法尻(のりじり、切土によって作られた人工的な斜面の一番下の部分)に側溝を設けて(図1)、路面に水が流れないようにしている。側溝の水は、一定の間隔で横断溝や暗渠(あんきょ、地下に埋設された水路。以下これらを「横断排水施設」と呼ぶ)を設け、谷側に流すのである。ところが想定を超える雨量だと、水が路面にあふれ出し、路面が川のようになってしまう。

 坂の下に行くほど水量が増し路面から谷側にあふれ出し、路肩を欠壊・浸食し、表層崩壊の引き金になる。写真1のような状況がよく見られるのだ。

写真1(筆者撮影)

 林道がない自然の状態であれば、山腹全体に均等に流れ落ちる水が、中腹に林道を入れることで川のように路面を流れ、特定の場所で路肩から流れ落ちる。集中豪雨などで水量が増えれば、その浸食力・破壊力はとてつもなく大きくなる。

 さらに横断排水施設が土砂や枝などで埋まったり、詰まったりしても路面水が発生する。これを防ぐためには、横断排水施設の底の土砂などを取り除く浚渫(しゅんせつ)が欠かせない。普段からのメンテナンスが林道の機能を維持する上でも、林地を保全する意味でも重要なのである。

 過去に集中豪雨によって山岳道路が発生源となったと思われる土砂崩れ災害が多くある。しかし、それらの主因は想定外の雨量にあって、道路的な問題は誘因とされてきた。災害報告を見ても、写真では明らかに道路が関与しているように見えるが、誘因にもされていない。一旦道路に何らかの問題があるとされれば、行政の責任が追及され、社会的不安をあおるので、行政も研究も忖度せざるを得ないのであろう。

 それはともかく、林道は、林業の実行に不可欠な施設であるが、林地に少なからぬダメージを与える言わば両刃の剣である。開設に当たっては、竣工後の維持管理まで見据えたトータルコストが最少となるように、設計する必要がある。


新着記事

»もっと見る