排水の極意
山をできるだけ削らないようにすることとともに重要なのが水処理である。先に述べたように、林道の山側を流下してくる山水をなるべく路面でせき止め、集水しないようにするためには側溝が必要となる（図1）。
側溝に集められた水は、林道を横断して流れる沢に落とすのが一番良いが、側溝があふれるまで水量が多くならないうちに横断排水施設を設けて、谷側に排水する。側溝は水処理の基本形であるが、このような横断排水施設とセットなので、工事費の増大とメンテナンスが負担になる。
国有林では、できるだけ林道の幅員を抑えるため、側溝を設けず、山側の路側排水あるいは路面排水で、横断溝を多用した。
学者・研究者、現場からいろいろな提案もあった。
図２は、路面の横断勾配（カント）を谷側に低くしたものである。これだと山水がそのまま路面を横断して谷側に排水されるので、路面を縦断方向に流れることがなく、林道にとってはベストである。ただ、走行するトラックが谷側に傾くというのは運転者に恐怖心を与えそうだ。実際運転者に聞くと山側法面からの圧迫も緩和されるので、意外と走りやすいということだった（写真3）。
図3は、路面下の路盤工の下に防水シートを敷き、その上に栗石（直径10～15センチほどの石）などを敷いて路盤工の透水性を高くした。山水はそこを潜って路側に排出されるというものだ。まあ、理屈はいいのだが、施工費用が高くなって実用性は低かった。
図４は、路面の中心線を山型に盛り上げたもので、山側の法尻に落ちた山水が山側に寄せられて縦断方向へ流下する仕組みになっている。古くから提案されており、施工実績もあると思うのだが、あまり普及しなかった。
ところが飛騨高山の長瀬土建社長の長瀬雅彦氏は、建設業と林業をタイアップさせた林建協働の第一人者であるが、ドイツで林業を学び、ドイツ式の屋根型路面の作業道を実践している（写真4）。右側の山から流れ落ちる水は、路面に広がることはなく、法尻の素掘り側溝と横断暗渠によって土砂による閉塞を緩和した排水方式としている。開設時点からメンテナンスの軽減を意図した優れた方法である。
以上のように、なるべく自然の地形に負荷を与えない線形と自然に逆らわない排水で、林道開設することが、開設から維持管理に至るまでのコスト削減と、恒久的な常時使用を可能にするのである。
林道の宿命である斜面崩壊と雨水の集積をいかに防ぐかについて、線形と路面排水の観点から述べてきた。次回は、実際の被災状況をもとに、その原因と対策について考察したい。
