2025年7月10日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月3日

 トランプ政権と手を打った法律事務所が提供すべきプロボノ・サービスについて、トランプは、石炭産業の再生、国際貿易取引の交渉、犯罪行為で告発された法執行当局者の弁護などを潜在的な主題として流布させている。取引に基づき彼等がサービスを提供したかどうかは明らかでない。しかし、彼等が言うなりにならず、トランプが大統領令を再び出すと脅かすことになれば、彼等は困難に遭遇するに違いない。

 あらゆる種類の顧客を代理する弁護士の独立性を守ることは、法の支配と裁判における公平性を保全するために不可欠である。司法省は大統領令に挑戦した法律事務所に味方した判決について上告するかどうかいまだ公表していない。

 上告すべきではない。トランプ政権が上告する場合は、米国の独立した司法制度は、大統領が法制度の根本原則を廃止することは出来ないことを迅速かつ決定的に示し続けるべきである。

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連邦地裁の判断

 個人的な恨みを理由に敵と見做す法律事務所に対し、トランプが矢継ぎ早に大統領令を発出して弾圧に着手したのが去る2月末だった。これに対し、戦うことを選択し裁判に訴えた事務所が4つ、他方、トランプ政権と交渉し取引で決着させることを選択した事務所が9つだった。

 9つの中には大統領令を待たず、大統領令を予期してトランプ政権に屈して取引した事務所が含まれる。戦うことを選択した法律事務所のうち、これまでに3つ(WilmerHale、Jenner & Block、Perkins Coie)が連邦地裁で勝訴している。残るSusman Godfreyの事案には大統領令の一時差し止めの命令が出ているが、なお係争中である。

 5月27日に勝訴したのがWilmerHaleである。判決は大統領令が憲法修正第一条違反であることを徹底的に指摘し、「この大統領令はその全体を憲法違反として無効とされねばならないとの結論に至った」と述べている。これに先立つ2つの事案についての判決も同様の趣旨である。


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