他方、トランプ政権と取引して早々と決着をつけた法律事務所の状況はどうか。彼等はトランプ政権との戦いに勝ち目はないと踏んでビジネスの生き残りと顧客の保護・維持を目指して取引を選択した訳であるが、案に相違して困難な局面に遭遇している。そのことを、この社説は書いている。
大会社がトランプ政権に屈した法律事務所を見限り他の事務所に乗り換える動きが見られるようである。「彼等が自らのために戦おうとしないのであれば、彼等は顧客のために熱烈に論を張ろうとするのか」との疑念を持たれているという訳である。法律事務所内の対立や顧客との摩擦が生じている例もあるようで、Paul Weissでは事務所を去る弁護士も少なくないようだ。
トランプ政権との取引では、トランプのアジェンダに沿ったプロボノ・サービスの提供の約束を余儀なくされたらしいが、その具体的内容は不明瞭のままのようである。しかし、内容如何によっては顧客との関係に問題が生ずることにもなりかねない。
トランプは上告するのか
この社説だけでは法曹界の動きの全貌を知ることは出来ないが、以上のような状況、特に、戦うことを選択した法律事務所が地裁において3勝0敗で勝訴したことを見て、取引を選択したPaul Weiss等の法律事務所は早まって間違ったと悔いているかもしれない。一連の大統領令は露骨な報復のための越権行為であり、憲法違反との判断は最高裁まで行っても覆らないのではないか。
トランプ政権がいまだ上告していないのは形成不利を見取ってのことかもしれない。トランプは負けを嫌うであろうが、傷口を広げたくなければ、上告を断念すべきかもしれない。そうなっても、不幸にして、取引を選択した法律事務所が救われることにはならない。