2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月11日

 トランプ政権は、今回のイラン攻撃をイスラエルとの集団的自衛権の行使として正当であるとの議論を国連安全保障理事会で展開しているようだが、この議論は成り立たない議論ではないかと思われる。そもそもイスラエルのイラン攻撃が、相手側の武力行使を要件にしている自衛権の行使として正当であったかについては、そうではないと思われる。その上、米国は、同盟国イスラエルを守るための集団的自衛権の行使としているが、米イスラエル間には日米安全保障条約のような同盟条約は存在しない。

イスラエル人の〝本音〟

 かつて、イスラエルとシリアとの和平交渉がかなり進んでいた時があったが、国境地帯での安全保障措置をめぐってもめて、なかなか合意ができないことがあった。クリントン政権の頃で、米国がイスラエルの不安を取り除き合意を促進するために米・イスラエル安保条約の締結を提案した。

 しかし、イスラエルはこの提案を政府部内で検討した上で、最終的には断った。当時、その議論に参加していた人によると、米国のありがたい提案を拒否する理由として、ユダヤ人の歴史的経験から他国の安全保障約束など信頼できないということであった。

 イスラエル人の自国は自分で守るとの精神は、非情に強いようだ。その意味で、米国の集団的自衛権の行使との説明は、イスラエルにとっても内心受け入れがたいのではないか。

 日本は、国際法を尊重する立場から今回の事態を検討して対処することが必要であろう。この Hathaway 教授の議論は参考にすべきである。

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