大統領に対する有効な法的制約の欠如は米国の権力均衡と国家安全保障にとって問題であるのみならず、今や世界にとっても問題だ。米国内の権威主義の台頭は、米大統領が史上最強の武力を気ままに行使するという一種の国際的権威主義の台頭を促している。
今回の場合は、約束した「取引」の獲得に失敗したトランプは、外交と交渉を捨てて力に頼る姿勢を見せ始めている。彼の行動は、グローバルな法的秩序を変え得る無法の実例を示したことで、同様なことをするよう世界中の独裁者たちを鼓舞する可能性がある。
こうした変化を食い止めるには、他国と議会の行動が必要になる。諸国は結束して米国の違法な行動を糾弾し、力ではなく外交によるイラン・イスラエル紛争の解決を求めなければならない。長期的には諸国は法の支持のために協力する方法を見つけるべきで、米国が再び法を犯そうとした場合は正式なグループとなって米国に集団的制裁を課すことさえ検討すべきかもしれない。
米国が戦争開始を決断する方法は改善されてしかるべきだ。手始めとして、議会は大統領の法的権限を超える武力行使については連邦資金の使用を直ちに禁ずるべきだ。
議員たちはあまりにも長い間憲法が定める自らの権限の喪失を黙認してきた。彼らはこの権限が永久に失われ、我々の過ちのために世界が代償を支払うようなことになる前に、この権限を取り戻すべく行動を起こさなければならない。
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成り立たないトランプの論理
Hathaway教授は、6月21日のトランプのイラン攻撃が国連憲章上も米国の国内法上も違法であると断定している。この教授の意見には賛成できる。米政府、米国民、米議会は、この教授の意見に耳を傾けるべきと思われる。
米国のイラン攻撃を契機に、中東情勢が悪化し、どうしようもなくなるのではないかと心配されたが、イスラエルもイランも米国も勝利を宣言して、停戦が実現する可能性が出てきていることは結構なことである。事態の鎮静化と諸問題の解決に向けての外交が進んでいくことを期待したい。
