2025年12月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月15日

 そして、イランの核問題の解決が持続的なものとなる様に外交的解決に集中するべきである。そのためには、まず中東地域を安定させるためにガザの戦闘を止める様にネタニヤフ首相に強く要求しなければならない。イランには、IAEAとの協力中断を撤回し核武装への誘惑を断たせなければならない。

 トランプは、イスラエルとイランの休戦を声明した時、今回の衝突を「12日間戦争」と呼んだ。恐らく、1967年の「6日間戦争」になぞらえたのであろう。しかし、「6日間戦争」の結果、イスラエルはアラブの土地を占領し、その多くは依然としてイスラエルが占領し、イスラエルが非公然に核武装する契機となったと信じられている。

 「6日間戦争」の影響は、現在の中東地域の不安定性の大きな原因の一つとなっている。トランプ大統領は、今回の「12日間戦争」の影響が、「6日間戦争」の様な不安定な効果を持たない様にするべきだ。

* * *

攻撃再開を避けたいトランプ

 今回のトランプ大統領による強引な停戦が脆弱だとの指摘は正しい。その最大の理由はイスラエルがイランに対してほとんど一方的にダメージを与えていたのにもかかわらず、トランプ大統領の介入でイランの核開発を破壊するというその作戦目標を達成できなかったと思われることにある。いわんやその本音と思われるイスラム革命体制の崩壊は端緒にも至っていない。

 米DIA(国防情報局)の初期的分析でフォルドの核施設へのダメージはイランの核開発を数カ月遅らせるだけと報じられたが、トランプ大統領がこの報道に激高し、DIA の分析を報じた NYT紙とCNNに対して記事を撤回しないと訴えるという騒ぎになっている。その後、中央情報局(CIA)長官は数年間遅らせる大きなダメージを与えたと発言しているが、問題の政治化により、かえって真相は分からなくなった。

 トランプ大統領が激高したのは作戦の失敗は自分の面子が傷つくだけで無く、イスラエルが戦闘を再開してしまい、さらに米国自身が再攻撃せざるを得なくなるかもしれないからだ。しかし、今回の米軍の空爆に対してトランプ支持層の内、MAGA(米国を再び偉大に)派は、トランプ大統領の「米国を再び不毛な対外戦争に巻き込まない」という公約に反していると強く批判しているので、トランプ大統領は攻撃再開を避けたいはずだ。


新着記事

»もっと見る