3カ国の思惑
現在、トランプ大統領は、イランに対して独自のウラン濃縮を放棄するという前提での交渉を要求し、さもなければ、「再び攻撃する」と脅かしているが、支持率を気にする同大統領が再度イラン攻撃を命令するハードルは高いと思われる。
ネタニヤフ首相は、上手くトランプ大統領を引きずり込んで、フォルドの核施設に大型バンカー・バスターを使わせたものの、停戦を呑まざるを得なくなってしまい面白く無いであろう。他方、当初、イスラエル側は「作戦期間は2週間」(FT 紙)としていた様に一旦、航空機の整備等が必要なはずで、このタイミングでの休戦自体は、悪い話では無い。
先週面会したイスラエルの安全保障関係シンクタンク関係者も、体勢の立て直しが必要であり、さらに、消費した対弾道弾ミサイルの補充(イスラエル側の主要対弾道弾防衛システムは国産なの再生産が必要と思われる)、今回のイランの攻撃で露呈した防空システムの弱点の改善には数カ月かかると述べていた。しかし、イランの制空権を握っている今、イスラエルが体勢を立て直した後にイランに対する攻撃を再開するのはほぼ確実だろう。CIA は、イランの核開発を数年遅らせたとしているが、その間にイラン側も防空網の再建、核施設の抗堪化を進め、数年後にはより困難な状況になることは目に見えている。
イラン側は、素直にトランプ大統領の交渉再開の呼びかけに応じていない。米側の要求が、イランのウラン濃縮能力の放棄であり、これはイランにとり絶対に受け入れられないレッド・ラインだからだ。
しかし、国際的な評判も勘案して、いずれ交渉には応じると思われる。もちろん、ウラン濃縮能力の廃棄で交渉は暗礁に乗り上げるのは目に見えているが、被害の再建をしたいイラン側も MAGAを気にするトランプ大統領も結果が出せないことは知りつつもダラダラと交渉を続けると思われる。そして、今回、米・イランの交渉が続いている最中にイスラエルが攻撃した様に、数カ月後、体勢を立て直したイスラエルが再度イランを攻撃するという可能性はあるのではないか。

