Foreign Policy誌(ウェブ版)が、6月22日の米国によるイラン攻撃はトランプ大統領のエゴのための戦争であったと指摘する、スティーブン・ウォルト教授の論説‘The War for Trump’s Ego’を6月26日付で掲載している。概要は次の通り。
米国がイランに対して行った戦争は、米国を安全にも、豊かにもせず、世界で尊敬されるようにもせず、中東をより安定した状況にもしないものであった。そもそも、ギャバード国家情報長官が議会で証言したように、イランは核兵器を持つ寸前の状況でもなかった。
たとえ、イランがいつか核兵器を保有したとしても、核兵器の数に鑑みれば、イランが米国であれ、イスラエルであれ核兵器を使用することは自殺行為である。さらに、イランが独自の抑止力を持てば、中東はより安全な場所になる可能性がある。
今回の戦争目的がイランに核爆弾を持たせないという点にあるのだとすれば、実際には逆の結果となった可能性が高い。トランプ大統領は、米国の攻撃は完全な成功であり、イランの核インフラを破壊したと主張したが、初期段階の被害評価は、イランの努力を数カ月遅らせる程度のものであるとのことであった。
イスラエルと米国による攻撃は、米国との交渉を批判して核保有を主張する、イランにおける強硬派の声を高めた。トランプが行ったことは、これら強硬派の議論の説得力を増したことである。将来、イランが核兵器を持つことになれば、トランプとネタニヤフの責任は重い。
それでは、イラン攻撃を始めたイスラエル、特に、ネタニヤフ首相の意図は何であったろうか。それは、第一にガザ、ヨルダン川西岸で毎日進めている戦争犯罪から世界の注意を引き離すことであり、第二に米国とイランとの交渉をぶちこわすことであった。
トランプが参戦したことはどのように説明が付けられるだろうか。まず言えることは、米国において、ネオコン主義は死んでおらず、特に、中東政策においてそれが顕著に見られることである。また、この分野では、イスラエル・ロビー(米国における親イスラエルのユダヤ人とキリスト教福音派のシオニスト)が強力な影響力を発揮することである。
