とはいえ、イスラエル・ロビーが米国の政策を決めるわけではなく、究極的な判断は、トランプによってなされた。ここで鍵になる要因は、世間の注目の的となることへのトランプのこだわりである。
トランプは、世界中が自身の一挙手一投足を注視し、討議し、そして理想的には賞賛することを望んでいる。トランプには、外交政策上の真の成果への関心はない。
トランプが関心を持つのは、偉大なことを行っているように見えることであり、それをしつつ、自分と仲間が金儲けをすることである。つまり、トランプ政権とは、リアリティ・ショー政権なのである。
トランプが実際の成果よりも見かけを重視する傾向は新しいものでもないし、驚くにも値しない。
一言で言えば、この戦争は、トランプ大統領のエゴが生んだ戦争である。戦争に突入する理由としては最悪だ。このトランプの失敗がもたらす長期的な帰結がそのことを明確に示すであろう。
* * *
東アジアへも軍事介入するのか
上記の論説は、リアリストの国際政治学者によるトランプのイラン攻撃についての論評である。虚飾を剥ぎ取って見れば、トランプのエゴを満たすための攻撃であった、という厳しい見方である。
この論旨の多くに賛同できる。ただし、「イランが独自の抑止力を持てば、中東はより安全な場所になる可能性がある」との指摘には同意できない。国際政治学におけるリアリスト独特の論理であるが、いかなる核関係にも冷戦時の米ソの核関係を引き写そうとするから、おかしな理屈となってしまう。
ここで、今回のトランプのイラン攻撃が東アジアの安全保障環境に及ぼす含意を考えてみたい。一部に、米国として、離れた地域への軍事介入を実際に行ったことで、中国の台湾での行動を慎重にさせる効果があったのではないかとの観測もあるが、果たしてそうだろうか。
