2025年12月6日(土)

勝負の分かれ目

2025年7月12日

日本の競技にも年間5兆円

 一般財団法人「スポーツエコシステム推進協議会」(東京都渋谷区)によると、スポーツベッティングの市場規模は世界的に拡大し、2024年はサッカーが121兆円で、次いでバスケットボールの31兆円、テニスの28兆円と続く。

 一方、警察庁が今年3月に初めて公表した国内の実態調査によれば、国内で約337万人がスポーツベッティングやトランプ、ルーレットなどのオンラインカジノ上での賭博行為を経験したことがあり、賭け金の総額は年間1兆2000億円を上回ると推計される。外国で賭博事業の許可を得た業者が日本語で運営するサイトも存在しているが、日本から賭けた場合は犯罪となる。しかし、経験者の4割は「違法性を認識していなかった」と回答している実態も明らかとなった。

 日本国内では、日本スポーツ振興センター(JSC)が、サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグなどの勝敗に関するスポーツくじを合法で取り扱っているが、海外のサイトでは、プロ野球や大相撲、さらには高校野球などの試合まで駆けの対象としている複数のサイトが存在する。いわば勝手に試合結果などを賭博の対象にされているのが実態だ。

日本の競技も賭けの対象になっている(Wpadington/gettyimages)

 スポーツベッティングが抱える問題の一つが、この「フリーライド(タダ乗り)市場」で、同協議会によれば、24年に日本の居住者が海外サイトを通じて日本のスポーツ競技に賭けた金額は1兆円と推計され、JSCのスポーツくじの同年度の売り上げ約1300億円をはるかに上回る額となっている。また、海外居住者が日本のスポーツ競技に賭けた金額は3.9兆円あり、日本におけるフリーライド市場は4.9兆円に達する。

 同時に、24年に日本の居住者が海外のスポーツ競技に賭けた金額は5.4兆円と推計され、日本の居住者が海外サイトを通じて国内のスポーツ競技に賭けた約1兆円を加えると、総額は6.5兆円に達した。

選手に持ち掛けられる八百長の魔の手

 米国では、違法市場にお金が流れることを嫌がって合法化する州もあるが、アスリートにとっては、自らの競技が賭博の対象としてみられることで脅迫や誹謗中傷、最悪のケースでは八百長などを持ちかけられるケースもある。

 6月22日付の朝日新聞は、日本のテニス選手が7年ほど前、「わざと負けたら(約)100万円」という英語のダイレクトメッセージ(DM)がスマートフォンに届き、興味があったらトイレに来るように勧誘があったという事例を取り上げる。この選手は応じなかったが、賞金額の少ないテニスの下部ツアーに出場している選手の中には、遠征費や用具代、コーチへの報酬などを捻出するためのお金欲しさに不正行為に手を染めるケースが想定される。朝日新聞は記事の中で、テニスの不正監視機関ITIAが24年だけで、八百長などに関与したとして33人を出場停止や罰金処分にしたことも紹介する。


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