欧州諸国は、今回の防衛費増額への同意により、以上の諸点について米国の譲歩を引き出し、米国が欧州防衛に対するコミットメントを削減するとしても、引き続き重要な役割を果たすことを希望しているが、欧州側には防衛費を増額し続ける以外に選択肢はなく、いずれにしても米国のコミットメントは下がっていく、とFTは結論付けている。
米国も防衛能力向上の可能性
ちなみに、一歩引いて考えれば、米国のイラン攻撃は、(国際法違反であるとはいえ)米国の持つ抑止力の(不確実性に基づく)信頼性を高めた点で評価されるべきだが、イスラエルは引き続きイランの現体制変更を目指しており、イランも濃縮禁止受入は体制変更に繋がりかねないので不可能であることを考えれば、両国が弾薬等を充てんし体制を整えた数カ月後には、一触即発の状況になり(おそらく、イスラエルの攻撃により)、紛争再発になることは避けられないだろう。
そうなると、米国は、中東地域から引くどころか、空母3隻体制を含む現在のコミットメントを減らすことが出来ず、結局、米国の能力を巡る日本他のアジア諸国と欧州との間のゼロサムの競争は益々深刻化するだろう。
その中で、実はNATOの5%は、日本にとっては若干朗報の側面もある。なぜなら、米国の軍事費の対GDP比は2024年段階では3.4%であり、これが関連経費を含めて5%に上昇することは、時間がかかるにせよ米国の防衛能力向上に繋がるからである。

