6月24、25日に開催された北大西洋条約機構(NATO)サミットにおける最大課題の一つは、トランプ政権による「防衛費5%」要求に如何に応えるかということであった。これに対するNATOとしての基本的な合意のラインを、ルッテNATO事務総長がサミットを前にForeign Affairs誌(電子版)に寄稿した論説‘The World Needs a Stronger NATO’で示している。要旨は次の通り。
ロシアはヨーロッパに再び戦争を持ち込み、中国、北朝鮮、イランと組んで世界秩序を再構築しようとしている。ウクライナ戦争が最終的に終結したとしても、モスクワがもたらす危険は消えることはないだろう。さらに、ロシアは5年以内にNATOに軍事的に挑む準備が整う可能性がある。
中国は、透明性を欠いたまま、猛スピードで自国の軍備を近代化・拡張する一方で、ロシアのウクライナ戦争を容認し、ロシアの防衛産業基盤を支援する上で決定的な役割を果たしている。中国の野心と力ずくの政策は、我々の国益、安全保障、価値観を脅かすものである。
NATOはただ傍観しているわけにはいかない。防衛力強化に必要な努力をしなければならない。
NATOを強化するには、あらゆるものの基盤となる防衛への投資を大幅に増やす必要がある。我々は本年のNATOサミットに向けて、同盟国が防衛費を国内総生産(GDP)の5%に引き上げるための具体的な計画を策定している。
新たな防衛投資計画は二つの部分から成る。支出の大部分(対GDP比5% のうちの3.5%)は「中核的防衛要件」に充てられる。6月初旬にNATO国防相が合意した野心的な新たな目標は、同盟国が提供すべき兵力と能力を規定している。詳細は機密扱いだが、同盟は防空システムとミサイル防衛システムを5倍に増強する必要がある。
同盟はまた、装甲車両と戦車をさらに数千両、さらに砲弾を数百万発必要としている。兵站、補給、輸送、医療支援といった支援能力を倍増させる必要もある。
同盟国はまた、軍艦、航空機、無人機、長距離ミサイルシステムへの投資を拡大する。サイバー空間と宇宙空間への支出を増やし、イノベーションを強化し、新技術を防衛分野に統合する能力を加速させることで、技術的優位性を強化する。
計画のもう一つの側面(対GDP比5% のうちの1.5%)は、インフラを含む防衛・安全保障関連投資への支援である。NATOは、軍隊を移動させ、適切な部隊を適切な場所に適切なタイミングで輸送できる民間輸送網(道路、鉄道、港湾)を必要としている。NATOは民間の備えへの投資を強化し、サイバー攻撃、破壊工作、その他の脅威からの防衛もさらに強化していく。
NATOの安全保障への投資には、防衛産業基盤への資金提供と設備投資が含まれるべきである。同盟国が十分な生産を行っていないことは明らかである。
