北大西洋条約機構(NATO)諸国は防衛費を国内総生産(GDP)の5%に引き上げるとしたが、米国の防衛予算は3%未満であり、敵対国、特に軍事力を増強した中国を抑止し、または戦うために、米国も防衛費をGDPの4~5%に引き上げる必要があると、米戦略国際問題研究所のセス・ジョーンズが、2025年6月27日付のウォールストリート・ジャーナル紙で論じている。
米国はとりあえず中東での戦争を回避したかもしれないが、世界情勢はますます危険なものになっている。実際、1週間内にイランとイスラエルは交戦し、米国はイランの核施設を爆撃、イランはカタールの米軍基地を攻撃した。他方、中国は軍事力を大幅に増強し、ロシアはウクライナで戦争を続け、金正恩は韓国を抹殺すると脅している。
トランプ政権の防衛予算は現下の情勢に対処するには驚くほど不適切だ。ホワイトハウスは 2026会計年度の防衛予算として8926億ドルを提案したが、これは実質ベースで昨年度より減っている。
上院軍事委員長によれば、提案された予算では米国の防衛費は29年にGDP の2.65%にしかならない。防衛に力を入れていないと批判されたカーター政権の時でさえ防衛費はGDPの4%~ 5%だった。
ピークは朝鮮戦争の時の14%で、その後アイゼンハワーの時は9~11%、ケネディとジョンソンの時は8~9%、レーガンの時は6%超だった。要するにGDPの3%の防衛費では不十分なのだ。
今の米国の防衛産業基盤はアジア、欧州、中東での長期の戦争に対して嘆かわしいほど準備ができていない。特に中国が戦時体制の防衛産業基盤を作りつつあるアジアでは米国は抑止力を失う恐れがある。
中国は兵器を大量に製造し、一部の兵器については米国を追い抜きつつある。パパロ米軍インド太平洋軍司令官は、「台湾周辺での中国の軍事演習は単なる訓練ではなく、武力による統一に向けた最終リハーサルだ」と警告している。台湾有事に関する模擬演習は、米国は戦争開始1週間で長距離精密兵器の弾薬が底をつくことを示している。
また、米海軍情報局によれば、中国の造船能力は米国の230倍もあり、年間2300万トンの船を造れるのに対し、米国は10万トン以下しか造れない。解決策は単純明快で、トランプ政権は防衛費をGDPの4~5%に引き上げる必要がある。
