また、18年にトランプ大統領が対イラン経済制裁を再開し、イランが原油を輸出できなくなると、再びアラブ産油国の原油輸出を妨害した。極めつきは19年9月のサウジアラビアの原油輸出を数日止めた原油生産施設への攻撃だったが、より深刻なのは、19年5月にほぼ同時に起きたサウジアラビアが紅海岸に原油を送るパイプラインとUAEがホルムズ海峡をバイパスするパイプラインの出口にあるフジャイラ港への攻撃であり、これは、バイパス・ルートも安全ではないというイランのメッセージだったと思われる。それゆえ、アラブ産油国が警戒する理由は十分にある。
原油価格高騰への圧力も
過去の湾岸アラブ産油国への攻撃は、イラン側としては、アラブ産油国の原油輸出を妨害することで、アラブ産油国とその原油に依存する国際社会に対して、攻撃を止めさせたり、制裁を解除させたりするようにイラクや米国に圧力を掛けるのが狙いだったと思われる。
今回、イスラエルにはそのような圧力は利かないだろうが、原油価格高騰は関税による物価高騰をオフセットさせるために油価の低下を強く望むトランプ大統領やこの地域の原油に約50%を依存している中国にとり大きな圧力となろう。90%以上依存している日本にとっても一大事だ。
上記の論説では、イスラエルのイラン攻撃に際してロシアも中国も当てにならなかったと指摘しているが、イランにとって中国は150万B/Dの最大の輸出先だが、中国にとってイラン産原油は6%に過ぎないのに対してサウジ産12%、イラク産10%、クウェート産5%、UAE産3%(JOGMEC資料)と湾岸アラブ産油国の方が圧倒的に多い。そもそも、イランに肩入れしてアラブ産油国との関係を緊張させる理由がないのである。

