2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月25日

 ペルシャ湾岸のアラブ産油国は、イランとどう付き合うかについてこれまで以上に時間と労力を割かねばならない。イスラエルの防空網に匹敵するような防空網を構築し、抑止力を高めるために弾道ミサイルを調達しようとするだろうが、過去数年間、イランから攻撃を受けたにも関わらずサウジアラビアとカタールは最近、米国とイスラエルに対する批判を強め、イランに対して忍耐強く、寛大になろうとしている。

 皮肉なことにイスラエルのイランに対する勝利は、サウジアラビアが内心では望んでいるイスラエルとの関係正常化の可能性を低めている。西側諸国では、「イランはもはや脅威ではない」と言われているが、近隣諸国にとってイランは依然として脅威であり、今後も中東諸国の主要関心事であり続ける。

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産油国攻撃の前科

 4月にサウジの国防相がイランを訪問し、UAEは米・イラン交渉の仲介役を務めようとする等、サウジアラビア、UAEの対イラン宥和姿勢が目立っていた。これはイスラエルとイランの緊張の巻き添えになる事を恐れていたからではないかと推測できる。上記の論説の言う通り、事態は湾岸アラブ産油国にとり悪い方向に向かっている。

 論説が指摘する通り、イランのイスラエルに対する中距離弾道ミサイルの攻撃は、成果を出せていない。しかも、ストックが枯渇しつつある模様で、イスラエルに弾道弾製造工場を破壊されているので補充もままならない。他方、イランには短距離弾道弾とドローンのストックは十分にあるので、その射程内で防空能力の低い対岸のアラブ産油国にとっては依然として大きな脅威であり、イスラエルが攻撃を再開すると要注意だ。

 イランは、紛争の当事者ではないアラブ産油国を攻撃した前科がある。イラン・イラク戦争中、イラクがイランのペルシャ湾からの原油輸出を妨害したのに対して、イラクの原油輸出を妨害出来なかったイランは代わりにペルシャ湾内を航行するアラブ産油国の原油輸出を機雷、対艦ミサイル等で妨害した。


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