秋田の新たな魅力
人口減少によるクマの出没などは、転入希望者にとってハードルとなるが、むろんマイナス面ばかりではない。秋田の新たな魅力となる観光地開発も、県内各地で盛んに行われている。
例えば、海辺の奇岩「ゴジラ岩」(男鹿市)、台湾の観光客が発見した絶景、八幡平の「ドラゴンアイ」(仙北市)、個人の庭が観光スポットになった「十ノ瀬(とのせ) 藤の郷」(大館市)、あるいは柿の実で作ったスムージー(能代市)、未利用魚のシイラを使ったシイラジャーキー(男鹿市の海岸沿い)など。
「男鹿半島のゴジラ岩やその近くの海岸などは、本当に素晴らしい景色です。夕方に眺めると抜群にいい。これまで当たり前と思って見過ごしてきたさまざまな絶景、珍しい風物が、今の秋田では続々再発見されています。これら新たな観光地を、従来の日本最大のブナ林や落ち着いた街並み、由緒ある神社仏閣などとうまく結びつけて、食や宿にも工夫をこらせば、秋田の付加価値は倍増しますよ」
「少子高齢課題県」でも、未来は決して暗くはない、と工藤さんは力説する。
―― 「秋田は日本の未来」と捉えた時、本書では触れていないテーマが幾つかありますね。外国人問題とか、道路・橋・水道管などの社会的インフラとか、空き家・廃屋問題とか。
「介護の人手不足などで次第に外国人のサポートが必要になっていますが、秋田で外国人はまだ他県ほど多くはなくて、その矛盾が大ニュースにはなっていません。県道の維持・管理なども、秋田県は検討段階で、その動向には関心を持っています。小中学校の統廃合や空き家・廃屋の問題もそうですね。少子高齢化の進行でさまざまな課題を抱え、
工藤さんは、個人的には女性の首長がいないことに注目していると付け加えた。女性の議員も東京都が3割なのに秋田県は2割弱。これから女性議員が増え、女性首長が登場するようになれば、秋田県は変わるはず、と
「でもね、秋田には統計に表れないいいところがいっぱいあります。それは言っておきたい。食べ物の豊かさがまずそうです。塩辛い物好きなのも秋田のコメが図抜けておいしいから。しかも客人に景気よく振る舞い、みんなで分け合い、譲り合う土地柄です。しかも凶悪犯罪は少ない。みんな優しいですからね。夜歩きも、東京などよりよっぽど安全です。本当に安心して暮らせるのはどちらでしょうか? 東京? 秋田? それぞれ長所や短所はありますが、見方によって私はひょっとして秋田の方ではないか、と思える時があります」
巨大災害が首都圏を襲った時、豊かで安全な地方の存在は無条件で必要となる。そんな視点からも、地方の少子高齢化問題を考えてみたい。
