念のため、道路貨物輸送と企業物価指数の品類別推移を比較したのが下の図5の4つのグラフである。いずれのグラフにおいても、赤い折れ線で示した道路貨物輸送(トラック輸送)の企業向けサービス価格指数の推移が、各品目の企業物価指数の推移よりも、かなり低い傾向にあることが見て取れるであろう。
トラック運賃については、貨物である日本国内で生産・流通し企業間で取引される「財」(モノ)の値上げに匹敵する値上げが実現できていないのではなかろうか?
トラック輸送コストの内訳
ここで視点を変えて、トラックを運行するためのコストに注目してみたい。
下の図6.は、道路貨物輸送(トラック輸送)の企業向けサービス価格指数の推移と、運行三費(燃料油脂費、修理費、タイヤチューブ費)を代表する軽油(大口需要者向けローリー渡価格)、自動車タイヤ、自動車整備の価格指数の推移を比較して示したグラフである。
ご覧の通り、トラック運送事業と同様に人件費の割合が大きい自動車整備のサービス価格指数は道路貨物輸送(トラック輸送)のサービス価格指数にかなり近い推移を示してはいるが、軽油とタイヤの物価指数、特に軽油の物価指数については、かなり大きな値上りを示している。
この点だけを以て断言することはできないが、トラック運賃については、燃料やタイヤの値上りの価格転嫁ができているかどうか、疑問であると考えるのは筆者だけであろうか。
荷主企業の売上高に対する輸送費上昇
ここで、これまで述べてきたことを踏まえながら、本稿の目的である「物流2024年問題」がトラック運賃を中心とする物流費に与えた影響に向かって、舵を切っていきたい。
材料として前回の記事で23年度調査までの結果を紹介した、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が毎年発表している「売上高物流コスト比率」について、アップデートをしておきたい。
下の図7.は、JILSの24年度物流コスト調査(有効回答191社)をもとに、物流コストの費目別構成比を現したグラフである。
24年度の売上高物流コスト比率は5.44%となっており、近年のトレンドからみると極々普通の数値であるといえるだろう。上のグラフが示す通り、物流費全体に占めるトラック運賃を中心とする輸送費の割合は55.89%であり、これを売上高輸送費比率に換算すると5.44%×55.89%≒3.04%ととなり、これまた過去の実績と大差ない結果となっている。



