24年時点で3.04%であった売上高輸送費比率が、図4.で示した25年5月の対前年同月比通り3.4%値上りしたとして、同年同月の売上高輸送費比率は、3.04%×(100%+3.4%)≒3.14%程度ということになる。さらに、図2.に示した荷主企業の肌感覚通り10%値上りしたとしても、3.04%×(100%+10%)≒3.34%程度ということになる。
長期的視野から理解する「物流2024年問題」とその影響
これまで述べて来たことをここでまとめてみると、およそ以下の通りとなるであろう:
道路貨物輸送(トラック輸送)サービスを受ける側の荷主企業の肌感覚としては、「物流2024年問題」がトラック運賃に与えた影響は大きく、5%から10%前後の値上げにつながったと感じている。
道路貨物輸送(トラック輸送)事業者側から見ると、トラック運賃の値上りは、貨物である日本国内で生産・流通し企業間で取引される「財」(モノ)の値上りに比較してかなり低く、近年のトラック運賃の前年同月比は、平均すると2%台後半から3%台前半程度である。
運行コストの側面から見ると、トラック運賃の値上りは、軽油費やタイヤ費の値上りに比較してかなり低いレベルにとどまっており、運行コストの値上り分を価格転嫁できているか、疑問である。
荷主企業の売上高に占めるトラック運賃の比率はおよそ3%であり、前年同月比で3%~10%値上りしたとしても、売上高へのインパクトは限定的である。
すなわち、24年4月にトラックドライバーの時間外労働時間の制限が始まったことは、トラック運賃を中心とする物流コストに大きな影響を与えたとは考え難いのが実態ではなかろうか。これまた前回の繰り返しになるが、メディアがこのような話題を取り上げる際には、特定の企業の動向に焦点を当て過ぎていると言える。
ところで、もっと長期的な視点でトラック運賃の動向を見た場合どうなるであろうか。そこでご覧いただきたいのが、1990年のトラック運送事業の規制緩和以前の85年1月から25年5月までの陸上貨物輸送の企業向けサービス価格指数の推移を示した図8.である。
ご覧の通り、バブル期には上昇の一途をたどっていたトラック運賃は、90年12月の規制緩和開始、91年3月のバブル崩壊を経て上昇トレンドが鈍化し、その後長期間にわたって緩やかな下降トレンドが続いたが、14年4月に荷主勧告制度が厳格化されたことに伴い上昇に転じ、それ以降、将来のトラックドライバー不足に向けて断続的に規制が強化されるにつれて、コンスタントに上昇を続けて来たのである。
24年4月にトラックドライバーの時間外労働時間の制限が施行したことが、トラック運賃の動向に大きなインパクトを与えたとは言い難いが、それに向かう中長期的な過程の中で、運賃上昇のトレンドに入ったと言えるのではなかろうか。
しかし、上で指摘した通り、トラック運賃の値上りのトレンドは、貨物である「財」(モノ)の値上りトレンドよりもはるかに緩やかであり、運行コストの値上り分を価格転嫁できているかさえも疑問であるというのが、現時点における筆者の見方考え方である。
このようなものの見方考え方をベースに、次回は「物流2024年問題」を更に深掘りし、その本質と将来の行方を占ってみたいと考えている。

