2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月7日

 豪州の国防次官補を務めたロス・バベッジが、米国のコルビー国防次官が台湾有事の際に豪州が如何なる役割を果たし得るかを知ろうとすることは至極もっともなことだとする論説を ASPI(豪州戦略政策研究所)の2025年7月18日付 The Strategist に投稿している。

(Handout/Pontuse/gettyimages)

 台湾を巡る大きな危機に際する豪州の立場についての助言を求める米国の要請は甚だしく誤解されている。豪州はその軍の指揮権を譲り渡すことを求められている訳ではなく、原則に沿った指針をもって要請を充たすことができる。それが、米国が期待していることのすべてである。

 しかし、豪州のコメンテーターは、報じられたエルブリッジ・コルビー(政策担当国防次官)の要請に驚き不快に思ったようである。The Australian紙のポール・ケリーは、7月16日付の論評において「米国は他の同盟国に対し、軍事衝突に対する将来の関与についてこのような意図表明を求めたことがあるのか?」と問うた。

 コルビーは戦争に豪州を参加させる権限を譲り渡すよう求めていた訳ではない。将来の軍事衝突への関与について同盟国が意図表明を行うことは普通のことである。

 コルビーの要請の背景を理解している豪州のコメンテーターはほとんどいないように思われる。コルビーとは自分は長いプロフェッショナルな関係を有するが、彼は 米英豪の安全保障枠組みAUKUS(オーカス)の合意の見直しだけでなく、新たな国防戦略の起草を託されている。

 コルビーは、これらの報告を起草するに先立ち、原則的な助言を必要としている。豪州の原則的なコミットメントがなければ国防戦略は著しく異なるものとなろう。2030 年代のインド・太平洋の大きな危機に際し米国の作戦を支援するために原潜が利用可能であるとの合理的な保証をペンタゴンが得られるのであれば、約束された原潜を豪州に提供しようとの米国の必死の努力は遥かに強まるであろう。


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