2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年8月7日

 しかし、一切の警戒感を欠いた論旨には些かの違和感がある。コルビーが求めているのは、原則的な立場を表明する論説の模範解答のようなことではないのではないかとの疑問も生ずる。上記に引用した国防総省筋の発言もそうであるが、トランプ政権には同盟国との間における負担の不均衡に対する不満がある。

 トランプ政権の政策運営との符合が指摘される。ヘリテージ財団の「Project25」には、台湾問題について、米国は中国が台湾およびその他アジアの同盟国を屈服せしめることを法外に困難なものとせねばならないが、「重要なことは、台湾の中国と米国にとっての相対的な重要性に鑑み、国民が負担する用意のあるコストとリスクの水準においてこれを成し得なければならない」との記述がある。

 米国は中国が武力で台湾を支配するに至ることを認めるのかと記者団に問われて、トランプは「それにはコメントしない。そのような立場に立つことを欲しない」と応答した。

同盟国はどう結束するのか

 「台湾を巡る衝突のシナリオも米国の対応も知らずして、同盟国は彼等がどう行動するかを具体的に示すことは非常に困難である」とのAEIのザック・クーパーの批判は正当である。しかし、台湾危機に同盟国が結束してどう対応するかという問題自体は死活的に重要であることは論を俟たない。それには、国防当局者間の静かな議論により、緊急事態のシナリオと同盟国それぞれの相互に統制の取れた対応を共有しておくということであろう。

 同盟国間に実力の格差が存在する場合には、実力に勝る同盟国に振り回され、実力に劣る同盟国が損な役回りを強いられる危険があるように思うが、予め綿密な協議を遂げることにより、そのような危険を緩和することも可能になるかも知れない。

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