2025年12月5日(金)

#財政危機と闘います

2025年8月4日

バラマキの競い合い

 今回の選挙戦を振り返ると、与党も野党も、相変わらず給付金や減税の規模を競い合うバラマキ政策に徹していたのが特徴だ。

 なぜ、選挙の度にバラマキが繰り返されるのだろうか。

 まず、政治の側では国民に対してバラマキを約束すれば、自分たちに投票してくれると思い込んでいることが挙げられる。あるいは、バラマキに懐疑的であったとしても、各党とも一票でも多くの票を獲得したいので、バラマキを約束しないことが自党に不利になると思えば、やはりバラマキを提案せざるを得ない囚人のジレンマ的な状況が発生する。

 こうした結果、給付金や減税の対象や規模を巡って各党で競争されることになる。選挙至上主義と大衆迎合主義の結果とも言えるだろう。

 一方、国民の側でも、最近の物価高や社会保険料の負担増で、現役世代も高齢世代も、手元に残る金額が想像以上に少なく、実質的な購買力の低下を埋め合わせようと、給付金や減税でのバラマキを求めているという点もある。

 結局、バラマキに関しては、一票でも多く獲得したい政治と購買力を埋め合わせたい国民の需要と供給が一致した結果であり、筆者がバラマキ政治とクレクレ民主主義と呼ぶ現象である。

バラマキ政治とクレクレ民主主義の起源

 自民党一党支配が続いた時代には給付を行う場合は、所得の低い層に対象を絞り、節度を守ってきた。一度バラマキを始めれば政治の側でも国民の側でも自制が効かなくなることを理解していたのだろう。

 日本の政治が急速にバラマキに舵を切ったのはリーマンショック後、旧民主党が「コンクリートから人へ」のスローガンで政権を奪取した頃だ。旧民主党の政権奪取で、現役世代への給付も票になることを発見した政党が、こぞって高齢世代にも現役世代にも所得の高い者にも低い者にも、バラマキを始めるようなった。こうしたバラマキ政治の理論的支柱となっているのが全世代型社会保障である。

 全世代型社会保障は、2012年6月、当時の与党(旧)民主党と、野党である自民党、公明党による3党合意を経て、同年8月、社会保障改革の基本的な考え方などを定めた「社会保障制度改革推進法」、消費税を社会保障財源化し、税率を10%に引き上げる「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」など、「社会保障と税の一体改革」関連法が成立した。

 そして、社会保障制度改革推進法に基づき、社会保障制度改革国民会議が設置され、①少子高齢化の進展、②家族や地域の支え合い機能の低下、③非正規雇用の増加に代表される雇用環境の変化など、社会経済環境の動向を踏まえて、高齢世代中心の給付、現役世代中心の負担というこれまでの社会保障制度の給付と負担構造を見直すことを求めた。つまり、負担と給付に関して、年齢で差別するのではなく、全ての世代がその能力に応じて支え合う、全世代型の社会保障に転換することが提案されたのがきっかけである。


新着記事

»もっと見る