入試問題でトンデモ内容
このように消費者庁や食品安全委員会では食品添加物の誤認を防ぐ努力を重ねてきたが、文科省の姿勢は変わらなかった。それを象徴的に示したと思えるのが、21年の大学入学共通テストの英語(リーディング・第6問B)の読解問題だった。
食品添加物である低カロリー甘味料が、がんを引きおこし、記憶や脳の発達に影響を与え、幼児や妊婦、高齢者にとって危険だと思わせるような英文を読ませる出題だった。
入試問題は、文科省行政にかかわる何人もの専門家が用意周到に目を通したうえで確認された内容である。低カロリー甘味料はすでに日本を含め世界の市場で流通している食品添加物であり、もしそれががんを起こし、脳に影響を与えるならば、そもそも国が認めるはずはない。そういう事実を知っていて当然の食の専門家ならば、低カロリー甘味料ががんを起こし、脳に影響を与えるという記述に疑問を持つはずだが、誰一人として、この出題の非科学的な記述に気づかなかった。
これを見て、筆者は、文科行政にかかわる人たちの頭の中はやはり「食品添加物は怖いもの」という潜在的な意識があるのではないかと勝手に想像をたくましくした。
きっかけは食品モニターの要望
そんな経過を知っているだけに、学校給食の衛生管理基準を見直すのは至難の業だと思っていた。ところが、7月1日に開かれた食品安全委員会の「食品安全モニターからの随時報告」で大きな進展があったことが分かった。
食品安全委員会は食品安全モニター(24年度・454人)から、日頃気づいた食品安全に関する課題や提案をまとめ、特に重要な案件については、関係省庁に回答を求めている。その重要な案件のひとつが「学校給食の衛生管理基準を見直すべきでは」という意見だった。
つまり、食品安全モニターから「『有害な食品添加物は使わないように』との文言を盛り込んだ基準は、食品添加物への嫌悪感や反対の根拠になっているのではないか。国が安全だと定めたことと大きな矛盾が生じているのに長年放置されている」との要望が出されたのだ。
この意見を重要だと判断した食品安全委員会が文科省に伝えたところ、以下の回答が来た。
「学校給食用の食材についても食品衛生法の規制が守られた上で納品されることは当然であり、当該規定は食品添加物そのものを否定したものではなく、人体に悪影響を及ぼす可能性のある程度に多量であったり、使用が認められていない食品添加物が添加されていたりする食品を誤って 使用してしまうことがないよう、給食を実施する学校設置者に対する注意事項を規定したものである。一方で、食品衛生を取り巻く状況の変化等を踏まえて、今年度中に基準全体の見直しに着手することとし、その際には食品添加物等に関する関係府省庁等とも連携する」
