2025年12月5日(金)

食の「危険」情報の真実

2025年8月4日

消費者庁でも問題視

 この問題は、14年、食品安全委員会の「リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会」で取り上げられ、「文科省が『有害な食品添加物』という前提に立つのはおかしい」との指摘が識者から上がっていた。

 そして、消費者庁が19年~20年にかけて設置した「食品添加物表示制度に関する検討会」でも話題になり、「有害な食品添加物」という文言が消費者や学校給食関係者にリスク誤認を生んでいると指摘されていた。この検討会をきっかけに、全国消費者団体連絡会の事務局長ら4人が20年7月、文科省の担当者に会い、衛生管理基準の見直しを訴えたこともあった。

 これに対し、文科省は「『国に認められない添加物が使われないように』という意味だ。この文言だけを変更することは難しい」などと答え、基準を見直すことに冷淡な姿勢を示した(7月3日・FOOCOMメールマガジン参照)。

国語的にも誤解を与える表現

 確かに「有害な添加物を使用しないように」という文章は、国語的な解釈としては「添加物は有害だ」とも読めるし、「国が認めていない有害な添加物は使用しないように」とも読める。

 しかし、たとえば、「有害な遺伝子組み換え作物を使わないように」という文章を読んだ場合、「国が認めていない有害な組み換え作物を使わないように」と読めるだろうか。もちろん現実に日本で流通している遺伝子組み換え作物は国の安全性審査を受けて安全なのだが、「有害な遺伝子組み換え作物」といわれれば、たいていの人は「遺伝子組み換え作物は有害だ」と受け取るだろう。

 どちらにせよ、衛生管理基準の文言は誤解を与える可能性をはらんでいる。

無添加表示を厳格化

 一方、食品添加物が不安視される風潮の背景には、店頭で見かける「無添加表示」の影響も大きかった。そこで消費者庁は、24年4月から無添加を表示できる要件を厳格化した「食品添加物の不使用表示ガイドライン」を施行した。

 消費者の間では同じ添加物でも、「天然なら安全で、人工・合成は危険」と思っている人も多いが、実際には天然と人工・合成にリスクの差はない。このため、消費者庁のガイドラインでは「人工や合成、化学、天然」といった用語を用いた添加物表示を認めないこととした。


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