また、出生率最下位の東京は、新たに生まれる子どもは少ないものの、転入による人口の転入超過(転入-転出)が多い。これに対して、表2に示すとおり、北海道、宮城県は出生率も低くかつ人口も転出超過となっている。
表2を見ると、東京の7.9万人の転入超過のうち、5.8万人が23区となっており、東京の中でも都心部への集中が見てとれる。また、北海道では道全体では転出超過であるが、札幌市だけを見ると転入超過である。
北海道の少子化の一因としては、この札幌市の動向が注目される。札幌市は単独で北海道全体の人口の40%近くが住んでいる。その中で「単身者世帯」の比率が高い。
単身者世帯比率は全国での平均値が38%であるのに対し、北海道全体の平均がそれよりも高く40%、さらに札幌市の平均は44%と高まり、札幌市中央区にあっては57%と非常に高い。単身者が多いということは、まず既婚者が少なく子どもが生まれる世帯が少ないことを意味する。
さらに、親世代との同居も少ないということであるから、子どもが生まれた場合の家庭内での親(じじ・ばば)からの育児支援が得にくい可能性を持っている。「全国における東京」の構図(少子・転入超過)が「北海道における札幌」で起きているといえるのではないか。
進む高齢化で課題となる社会インフラ維持
このため、北海道の高齢化は今後急速に進むと予想されている。表3は現在(2023年)と将来(2050年)の地域別の高齢化率上位20件を示したものである。日本全体が高齢化してゆく中、北海道はその順位を上げており、他の地域よりも高齢化が進んでゆくことを表している。表中の赤字は2050年に高齢化の順位が上がる地域を示している。
このように、高齢化が進み総人口も減少していくと、地域経済の維持、特に利用者の規模が求められるインフラ系の経済・サービスの維持が困難になる。目立つところでは、国鉄民営化後のJR北海道の路線の廃止などによって、公共輸送サービスの縮小が起きている。
また、金融庁が『地域金融の課題と競争のあり方』(2018年)によって公表した「各都道府県における地域銀行の本業での競争可能性」によれば、北海道は地域金融機関について「2行での競争は不可能だが、1行単独(一番行の シェアが 100%)ならば存続可能な地域」として分類されている。


