独自の物産をどう売り込むか
地域人口が減少する中で、上記のような人的交流人口の他に他地域との交流を通じた地域経済の維持戦略としては、北海道独自の産物により地域外から収入を得るということがあげられる。
域外からの経済的な資金流入の手段としては「ふるさと納税」があげられる。表4は先ごろ発表された総務省発表の24年度のふるさと納税の受入件数および受入額の実績である。これを見ると金額ベストテン、件数ベストテンともに北海道の市や町がランクインしていることが分かる。
特に、白糠町は金額では200億円以上で2位、件数では100万件以上で1位と圧倒的な強さを持っている。ちなみに、宝塚市の257億円は市立病院に対する市民2人からの寄付で特殊要因と言え、実質的には白糠町が全国トップと言えよう。
白糠町は「イクラのしょうゆ漬け」や「サーモン」などの海産物を返礼品としてそろえ、人気を集めている。北海道内2位の別海町も大いに健闘しており、地元の特産品巨大「ほたて」の返礼品が大好評である。
このように、地元の特産品の強みを活かして域外のファンを獲得していくことは、食産品に恵まれた北海道ならではの戦略の候補として注目される。
北海道の食産品といえば、その大きな台地から生み出される農産物であろう。表5に示す通り、北海道は乳牛、肉牛、じゃがいも、たまねぎ、小麦など多くの農畜産物で全国1位を占めている。
北海道の農業は「ただ面積が大きいので出荷額が多い」というわけではない。農林水産省の「農地中間管理機構の実績等に関する資料(令和6年度版)」によれば、担い手への農地集積の状況は25年3月時点で、全国平均で61.5%に過ぎないのに対し、北海道は92.5%ととびぬけて高く、農地の効率的運営がなされていることがわかる。
また同じ農林水産省の「令和5年度の都道府県別の荒廃農地の発生状況」によれば、いわゆる耕作放棄地の面積は、47都道府県中42位と少ないことがわかる。当然、各都道府県の耕地面積に占める割合でいえば、北海道の荒廃農地面積比率は全国最小である。
選択と集中で生き残れ
このように、北海道は人口減少のリスクに直面しつつも、質的には非常にとがった特性をもつユニークな地域である。北海道の観光と農林水産業の比較優位は、第1次産業(農林水産)と第3次産業(サービス業)の比率が全国平均より高いということからもわかる。
北海道は、その得意とする産業分野を選択し、資源を集中することで超高齢社会も持続可能な社会を維持できることを期待する。この教訓は北海道だけではなく人口減少に直面する全国の地域に言えることであろう。


